若旅 一夫 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
高校2年生の時、親が連帯保証人となったことで、担保をつけられて苦労している姿を見ていました。そこで漠然と、法学部にすすみ、弁護士になりたいという想いを持ちました。
印象に残っている案件(事件)
一番印象に残っているのは、夫婦の離婚と財産分与の事件ですね。その夫婦には、莫大な財産があったため、解決が困難でした。結果、和解による解決となりましたが、和解条項もたくさんあり、法律関係が極めて複雑なケースでした。
午後2時から和解の話し合いが始まり、夜中の10時まで続きました。その間ずっと裁判所が付き合ってくれましたが、相手方の弁護士と協力して、依頼者の方を説得した結果、収束しました。一審は横浜地裁、二審は東京高裁でしたが、裁判所と弁護士が協力関係の中、当事者にとって最も妥当な解決に落ち着いた点が特に印象に残っています。
仕事の中で嬉しかったこと、弁護士になって大変だと感じること
事件解決後の依頼者の方の喜びが、何と言っても一番に嬉しいです。大変なことは、正当な解決について依頼者に納得してもらうことですね。
事件を受けた時に分かっていた状況や証拠であっても、事件を進めるうちに状況が変化するということは大いに有り得ます。新たな証拠が出てきたら、それ一つで状況は大きく変わってきます。ご相談にこられた際とは違う、依頼者の方の期待にそぐわない結果になる時があるのです。このように、解決の正当性が依頼者の期待と違っている時は説得が大変だと感じます。
休日の過ごし方
日頃の仕事で心労が多いので、休息に充てるか、ゴルフをしたり、ジムに行ったり、歴史小説が好きなので読書をしたりします。他には、絵を描くのが好きなので、絵を描くこともあります。短時間で描くものもあれば、日にちをかけて描くものもありますよ。まずは構想を練って、どの紙にどの道具を使って描くかを選びます。現在、会長室に飾ってある絵は、幻想的に仕上げるために、黒い紙にスプレーとクレヨンを使って描きました。
弁護士としての信条・ポリシー
120%依頼者の方に喜んでもらえるよう、納得してもらうことを心がけています。ご相談を受けたら、まず依頼者の方にとってベストの解決をアドバイスすることにしています。事実に法律をあてはめて、どういう解決が可能か、どういう選択がベストかを考えるのです。依頼者の方が間違って考えていたら、時に厳しく言うことも大切だと思います。
昔、夫に浮気をされた奥さんが、浮気相手の女性をとことん懲らしめたいと相談に来られました。しかし、浮気相手の女性への法的な要求を超えて恨みをはらすことを求めるのであれば、この案件は受けられないと私は言いました。きちんと説明をしたら、彼女も納得してくれたのです。このように、全て依頼者の方の要求を鵜呑みにするのでなく、依頼者の主張の正当性を考えた上での解決の道筋を立てることが大切だと思います。
日弁連副会長、東京弁護士会会長職について
東京弁護士会の会長は、自動的に13人居る日弁連副会長の筆頭になり、実務の取りまとめ役となるのです。東京弁護士会の会長職との兼任なので、多忙を極めますね。2010年度就任された、宇都宮会長は、日弁連の60年の歴史のなかで初めて再投票による当選でした。いかに日弁連の結束を固めていくかが課題となり、「水魚の交わり」を合言葉に団結のため、力を注ぎました。
関心のある分野
弁護士自治に興味があります。イギリスでは、2007年に、ソリスター団体であるローソサエティーが自治権を奪われるという出来事がありました。日本の弁護士会も自治権を失うことのないよう、行動していかなければなりません。これに関連して、法曹人口問題、法曹養成問題、隣接士業問題にも関心があります。
今後の弁護士業界の動向
私は、法曹人口問題を取り扱っている分野の責任者でもあるので、弁護士会がどういう弁護士を理想としているのか、弁護士の理想像を明確化させる必要性を感じています。
弁護士数の急増に当たり、従来のプロフェッションモデルを維持していくのか、ビジネスロイヤーといったようにビジネス化していくべきなのか。ビジネス化は避けられませんが、その流れのなかでプロフェッションさをいかに失わないか、人権擁護を弁護士の基本的使命、アイデンティティーとしていくかが重要だと思っています。
弁護士業界が自治を維持していくこと、ビジネス化の波に対してプロフェッション性を失わないことの二点が大切でしょう。
ページを見ている方へのメッセージ
日弁連は、年間およそ62億円もの予算で運営されていることをご存知でしょうか。これらの事業費がどう使われているかと言うと、主として社会貢献や人権擁護活動などの数えきれない公益活動に使われているのです。運営費にかかるものもあれば、公益事業のための投資にも利用されています。しかもこの経費は、国からの補助は一切なく、弁護士の会費によって賄われているのです。
弁護士は、お金が儲かる仕事だと思われがちですが、全く違い、社会貢献活動をしています。そういった意味でも、市民の皆さんには、弁護士の真の姿を理解して頂きたいですね。