橋口 尚幸 弁護士 インタビュー
弁護士を目指した理由
東京大学での4年間は理系(工学部航空学科宇宙工学科)の学生でしたが、自分自身は、研究室で「物」を相手にコツコツ研究をしていくようなことには向いていないと感じていました。それよりは人間を相手にするような職業に就きたいと考え、大学に入ってから法律に興味を持っていたため少しずつ勉強をしていたこともあって、法律家を志すようになりました。
資格予備校の授業も面白かったですし、法学はロジック勝負の面が強く、理系の自分でもやっていける実感はありました。それでも4年生で挑戦した司法試験は歯が立たず、一橋大学の法学部に入り直し、司法試験に合格しました。
理系からの受験に関しては、時代背景としてバブル期で理系学生も文系就職することが多く、そういう周りの雰囲気に影響された面もあったと思います。
留学生活を振り返って
アメリカのハーバード・ロースクールに留学しました。アメリカのロースクールには、「LLM」という外国の法曹資格者のためのコースがあり、1年間でマスターの資格を取ることができます。その修学ビザには、卒業後1年間アメリカで働くことのできる権利が付いており、通常、卒業後1年はアメリカの事務所で働いてから帰国します。
日本からは大事務所から各学年の優秀な人材が1人ずつ来ていましたが、みんな恐ろしく賢かったです。しかしロースクールでの英語のディスカッションは勢いが凄まじく、そのような優秀な日本人学生でもなかなか発言できない状態でしたね。
特に関心のある分野
特許に関する分野です。
研修所で事務所をたまたま紹介してもらったことがきっかけで、特許の分野に関わることになりました。もとより理系の技術には興味がありますから、自分の能力を活かせる分野です。
この特許の分野では理系出身であることが、企業側も担当者は理系出身の方が多いですし、知識をふまえたコミュニケーションがとりやすいです。訴訟においても中身を理解することは必須です。
取り組んできた事例
インクジェットプリンタに使用するインクタンクの特許権侵害訴訟があります。他社が特許のライセンスを受けずに互換用インクタンクを 製造することを訴えたものです。
この事件の背景には、プリンタ本体を比較的安価にしつつ、一方でインクタンクの技術を特許で保護してプリンタの開発費用を回収するという、独特ながらも合理的なビジネスモデルがあり、第一審の裁判官は、特許侵害問題そのものよりも、このようなビジネスモデルの在り方に疑問を抱いて特許権者を敗訴させたようにも思えました(控訴審では、知財高裁は特許侵害を認めて特許権者を勝訴させました)。
このように、特許権侵害の訴訟でありながら、特許問題そのものよりも、その背景や周辺に影響されて結論が決まることもあり得るというのは、(それがよいことか悪いことかも含めて)法律家としていろいろ考えさせられました。
仕事で嬉しいこと・弁護士としての信条
嬉しいのは、やはり裁判に勝つことです。
企業の存続に関わることも多いですから、裁判での責任は重たいです。とはいっても弁護士が大きな責任の負うのは当然のこととも言えますね。
まじめにやっていくこと、ベストを尽くすことを信条に仕事をしています。
依頼者に対して心がけていること
コミュニケーションをしっかりととることです。
時として、誤解をしたまま訴訟を進めていって、かなり後になって本当のところが分かることがあります。理系の技術は説明することが難しいもので、技術内容を自分なりに伝わりやすくまとめたつもりのものが、実は依頼者たる特許技術開発者の真意と食い違ってしまうということもあったりします。
そういうことをできるだけ防ぐためには、先入観を持たずに依頼者の話を素直に聞くこと、少しでも納得のいかない点については遠慮なく質問することなど、依頼者とのコミュニ ケーションが大切と考えます。