大野 聖二 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
大学に入ったとき(1979年、昭和54年)は、遺伝子を研究してバイオの研究者になろうと思っていました。しかし、駒場の授業を受けているうちに、紙と鉛筆をもって理論的な研究が主の理系の道に進むより、もっと社会と直接にかかわる人生を歩みたいと考えるようになりました。
その頃、ちょうど参加した植物のバイオ関係の研究会テーマが知財。知的財産法の中山信弘先生の話を聞いて、技術と法律が融合する分野があることを初めて知り、法律に興味を持ったことがきっかけです。
学生時代
理系から法学部に進学して、横書きの教科書が縦書きになり、また、ロジカルな世界と思っていたら違ったこともあり、法律の勉強は、慣れなかったですね。
もともと高校生の頃から、コンピュータが好きで、大学に入学した頃から友人とゲーム・プログラムを作ったり、その関係で法学部3、4年生のときは起業して会社を設立したりしました。
受験時代に苦労した話や、勉強をする中で工夫したこと
苦労したのは、自然科学と法律学の考え方の違いでした。真実が一つで神様と勝負しているような、理科系の論理的思考からすると、法律は、結論の妥当性を追求するために、論理的には妥協せざるを得ないことがある点で、学生時代は気持ち悪さを感じました。
しかし、法律は「説得の学問」ですから、相手をいかに説得するかという意味でのロジックで独自の価値体系が構築されており、社会経験を積むにつれて、このような「大人の」学問の面白さがわかってきました。
司法修習時代の経験や思い出
東京修習(43期)で2年間を過ごしました。修習生になったときは、すでに知財の分野をやることを決めていたので、エンジニアと法律家が議論をするような研究会に出ていましたね。
最初に入所した事務所で取り組んだ案件
湯浅・原法律特許事務所(現ユアサハラ法律特許事務所)に入所して、1年目は様々な事件を担当しましたが、2年目以降は知財オンリーで特許権や著作権の案件に取り組みました。 思い出の案件は、ストリートファイター2の著作権をめぐり、カプコンがデータイースト社を訴えて争った、日米同時の訴訟案件です。
アメリカの法律事務所と日本の法律事務所の違い
私の世代は、弁護士はジェネラリストであるべきという意識が強く、知財を中心にやりたいといっても、「特許じゃ食えない」とか「弁理士と競合する」という先輩弁護士が多かったですね。
他方、米国では、当時から既に知財専門のロースクールや法律事務所が存在し、弁護士についても、例えば薬の特許だけ、とか、機械の特許だけ、というように専門化・細分化されていました。
米国では、クライアントも弁護士資格を持っているので、企業内外の弁護士が協力し合いますから、企業外弁護士に対する専門化・細分化の需要があります。日本でも、弁護士が増えるにつれて類似した状況になるのではないでしょうか。
大野総合法律事務所のコンセプト
私が研鑽を積んだ湯浅・原法律事務所は、老舗で良いクライアントも多かったです。独立して開設した大野総合法律事務所は、「新しいことに挑戦したい」という気持ちで、技術系の経歴がある弁護士を中心に集めて、最先端の技術に特化し、例えば情報通信、半導体、バイオ等、ニッチな分野を取り扱っています。
また、国際的な並行訴訟において、いかに海外の事務所とタイアップするか、にも力を入れています。
印象に残っている案件(事件)
日本で初めて、アメリカの特許を日本の裁判所で行使した、カードリーダー事件です。日本の特許法の下では、属地主義が採用されているため、国外特許を国内裁判所で行使する法律構成は成り立たないだろうといわれる中での、チャレンジングな訴訟でした。
最高裁まで行って結局は4対1で敗訴したのですが、オランダ・ハーグの地方裁判所が、ヨーロッパの域内の特許権の行使を認める等、「マルチナショナル・パテント・エンフォースメント」という考え方が国際的に広まりつつあったので、日本にもなんとか採り入れられないかとの意気込みで取り組みました。
もう一度法曹人生を歩むなら、法曹三者のどれを選ぶか
裁判官になりたいなと思います。弁護士をしていると、最後に訴訟の結論を決められないフラストレーションがありますから(笑)。
弁護士に最も求められると思う力
クライアントからの信頼を得て、これに応える力だと思います。私は訴訟屋なので、クライアントの信頼に応えるためには、訴訟に勝つことが一番なのですが、負けても納得がいく判決を得られるように努めています。
ページを見ている方へのメッセージ
私の事務所では、通常の事件はほとんどやっていないのですが、新しい分野で、技術の発展をサポートする仕事をしています。このような分野では、学者や裁判所は後追いになりがちですが、現場に突然飛び込んでくる、誰も考えたことのない問題の解決に取り組めることが魅力の仕事です。