山内 一浩 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
学生時代に社会問題について弁護士が活躍している本を読んだことです。労働問題や公害問題、薬害問題などについての本でした。元々私は、大学に入る時に弁護士になろうとは考えていませんでした。あまりにも薬害や公害といった社会問題が解決されない状況だったので、「官僚になって社会を変えたい」と思っていました。
しかし、色々と社会問題についての本を読んでいると、弁護士は依頼者のために事件に取り組んでいるのですが、それで完結しているのではなく、被害にあっている人の救済活動をやりながら国の政策をも変えていき、社会を変えていくことに積極的に関わっていることが分かり、弁護士になりたいと思いました。
印象に残っている案件(事件)
日本マクドナルド店長の「名ばかり管理職」残業代請求事件や日本IBM会社分割事件などたくさんありますが、特に印象に残っているのは、労働者に対する配置転換と降格、いじめのある事件です。
この事件は、ヘッドハンティングで製造部長と製造課長が会社にきたのですが、その二人がとても仕事が出来る方々で、色々な旧弊を打破して会社を良くして利益を上げていたのです。
しかし、元々いる旧経営陣の人達は彼らを煙たく思い、彼らを追い出そうとしました。ある日突然製造部長、課長を解任し、ヒラに降格し、しかも製造部から営業部に配置転換し、さらに従来の取引先を与えず「どこでもいいから飛び込み営業で年間1億3千万円売ってこい」というような無茶な目標を押し付けました。このようにいじめて、嫌になって自分から辞めるよう仕向けた事件でした。
配置転換、降格は無効であり、配置転換後いじめを受けたことに対して、少ないですが慰謝料100万円という判決を貰えたことが非常に印象に残っています。その人達を如何に苦しい境遇から救い出すかという弁護士としてやりがいを感じる事件だったので、特に印象に残っています。
仕事のなかで嬉しかったこと
やはり依頼者に感謝されることです。日本の労働状況は、労働組合が弱くなって会社のやりたい放題という感じがします。労働事件で解雇されたり配置転換されるということは、それによる経済的不利益も大きいのですが、「あなたはダメ」という理由でやられるのですから、労働者の誇りやプライド、生き方をも著しく傷つけるという面もあります。
ですので、労働者の持っている誇りやプライドを取り戻すことも、労働事件の重要な側面だと思っています。そこで上手く解決出来たり、良い判決を貰えると、弁護士としての醍醐味もあるし、苦しいところに追い込まれていた依頼者が喜んでくれるので、そういったことが嬉しいですね。
弁護士になって大変だと感じること
なかなか担当している事件のことが頭から離れないことです。上手くいっている事件ばかりだといいのですが、そうでない事件もあります。同僚とお酒を飲んでいる時や電車の中で吊革にぶら下がっている時、家に帰ってお風呂に入っている時などに、自然と事件のことを考えたりしています。そういう時にいいアイディアが浮かぶこともあるので、すぐに手帳に書き込んだりしています。
弁護士の扱う分野によって違うのかもしれませんが、私たちの仕事は依頼者の人生を背負っているところがあり、裁判の結果によってはその人の人生が変わってしまうこともあります。そういったことを感じるので、事件のことをいつも考えてしまいます。良い結果が出ればそこから解放されることになりますが、そうでない場合はなかなか大変です。そこの気分転換を、みなさん苦労しているのではないかと思います。
休日の過ごし方
普段は夜が遅いので、日曜日は昼と夜家族でご飯を食べます。また、ストレス解消のためゴルフの打ちっぱなしに行ったり、自転車で街乗りをしたりしています。
弁護士としての信条・ポリシー
依頼者や裁判所に対して誠実に仕事をすることです。誠実にやって、出来るだけ依頼者の利益のためになるようにしたいと考えています。
依頼者に対して気をつけていること
法律や事件解決までの道筋、選択肢などをできるだけわかりやすく説明することです。私の専門分野の労働事件についても、依頼者の方には労働法や裁判例をご存じない方もたくさんいます。それを如何にわかりやすく説明するか、依頼者に理解をして頂いた上でその先の選択肢について考えて頂きたいと思っています。その説明に気を使っています。フローチャートのような図式を用いて視覚的にわかりやすく説明するなどの工夫もしています。
関心のある分野
繰り返しになりますが、労働分野です。日本の労働者は本当におとなしくて言いたいことも言えない、逆にいうと会社側の権力がかなり強いと感じます。そこを少しでも変えて、労働者が安心して働いていけるような社会にしたいということに関心があります。
今後の弁護士業界の動向
一言で言うと厳しいのではないでしょうか。もともと弁護士に気軽に相談にいくという風土がないところに、色々な分野に進出出来ることを前提に司法改革で弁護士の数を増やしたけれど、上手くいっていないということがあると思います。
また最近では、様々なツールをインターネットなどで簡単に手に入れることが出来ます。労働事件の分野ですと、残業代計算のソフトが出回っていたり、これはどの分野についても言えることですが、訴状や申立書の書式などをインターネットで手に入れることができます。
こうしたことに経済的な苦しさも加わって、自分でやる人も増えています。そういう状況で、弁護士への依頼が増えるのか。また、ネットで大量集客を狙う事務所もたくさんあります。今までは、いわゆる町弁の個人事務所でもやれていたのですが、これからは、何らかの特色がないと依頼があまり来なくなる可能性があるのではないでしょうか。
今後のビジョン
事務所の継続、発展を実現していかなければならないと思っています。私の所属する事務所は、1954年に創立して以降一貫して労働事件を労働者側でやってきました。かつては労働組合が強かったので労働組合からの依頼の事件が多く、今は個人の労働者から依頼を受けることが多いですが、一貫して労働者の救済、権利の実現や発展のためにやってきました。
これから弁護士の世界は厳しいと思いますが、その中でも私の所属するような事務所は残っていかなければいけないと自負していますし、労働者や市民の拠り所になるように、事務所をさらに発展させていきたいと思います。
ページを見ている方へのメッセージ
弁護士はプロなので、お金を払ってでも信頼して委任された方が良いと思います。今後の弁護士業界の動向で述べたツールなどが出回っていて、一知半解でやってみて上手くいかないという例を結構耳にします。あるいは、上手くいかなくなってから困って依頼に来る方もいます。
とにかくまず早目に弁護士に相談してみるべきで、お金を払うことに対してあまり躊躇しない方がいいと思います。相談してみて、「この先生は信頼出来そうだ」と思ったら、費用は掛かるかもしれませんが、依頼された方が良い結果に結びつくと思います。