加藤 俊子 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
中学生の時、祖母が土地の問題でトラブルにあい裁判になりました。とても大変そうだったので、子供ながらに弁護士になって法的なアドバイスができたらと思ったことがきっかけです。
都立大には司法試験の受験者は非常に少なかったのですが、友人が受験勉強を始めたり、合格した先輩方や大学の先生方に論文の答案を見て貰うなど指導が受けられる幸運が重なり、大学3年から司法試験に取り組みました。
当時熱心に指導してくれた刑法の前田先生から「司法試験は優秀な成績を目指す必要はない。合格レベルすれすれでもよいので早く受かることだ」と言われたことや合格者と接することで具体的な目標を持つようになったこともよかったです。その結果、卒業1年目で最終合格し、子供の頃からの弁護士になる夢が実現することになりました。
弁護士になって感じたギャップ
私は社会経験ゼロで弁護士になりましたが、依頼者は会社の社長や資産家など、年齢も経験も地位も自分より高い方が多く、最初は緊張して雑談すらできませんでした。
でも、ボス弁の指導のもとで相談しながら仕事ができましたし、先輩弁護士の仕事ぶりを近くで見聞きしながら仕事を覚えられたので、ギャップはあまり感じませんでした。最初の数ヶ月はボス弁や先輩弁護士と一緒に仕事をしながら学ばせて貰えたので、良かったのだと思います。
修習期の思い出
弁護士志望でしたが、裁判所や検察庁での実務修習は貴重な経験でした。特に検察での取調べ修習は苦労しましたが興味深かったです。実務修習は浦和(現さいたま)で15人で仲良く勉強をしたり、テニス等のスポーツをして遊んだり、お酒を飲んだり等、とても仲良く過ごしました。今でも裁判所等で顔を合わせると懐かしく親近感がわきます。
印象に残っている案件(事件)
離婚の案件で連れ去られた子供を取り戻した事件が印象に残っています。私の依頼者は妻、母親で、こちらから申立てた離婚調停中に、別居していた夫、父親に小学校2年生の子供を登校中に連れ去られてしまいました。
どこに住んでいるかもわからず、まず探すのが大変でした。探した後は、取り戻すための手続きを、子の引渡の仮処分、審判、人身保護請求と考えられるものを全てとりました。引渡の執行のため、早朝、執行官や執行の補助者数名と父子のアパートに出向き、不在で空振りになり、最終的に人身保護請求手続きで和解に持ち込み、子供を返してもらいました。
母親や私も大変でしたが、半年位の間に、父親と母親の間を何度も行き来したり転校をくり返した子供の精神的なダメージは計り知れません。子供を迎えに行った帰りのタクシー内で子供から足蹴りされた痛さは忘れられません。
家族の問題は金銭の問題とは全く違う難しさがあります。離婚成立後に子供との面会交流がスムーズにいかず、軌道に乗るまで、代わりに実施のための連絡をとったり、時には付添で一緒に公園へ行くような案件もあります。
関心のある分野
「ADR」という裁判外紛争解手続に関心を持ち所属弁護士会や日弁連の委員会を通じて運営に関わったり実際に弁護士会や行政等のADRであっせん人をしています。これは、裁判所の調停手続きの様な手続きを行政や民間の紛争解決機関で行うものです。
当事者からよく話を聞き、整理して、何が問題かを探し、当事者が歩み寄って和解に至るよう仲介します。コミニュケーション能力や調整能力が必要です。
事件としては、弁護士会等で長く交通事故の損害賠償に関する判例の動向等の調査研究に関わっているので、損害賠償請求事件全般に興味を持っています。
弁護士になって大変だと感じること
依頼者との関係です。いつもよい結果がでるわけではなく、敗訴の見込まれる難しい案件を引き受けることもあります。そういった時こそ、弁護士は依頼者に状況を説明して説得し、できる限り有利になるように紛争を終わらせるようにしなければいけません。事件の終了まで依頼者と弁護士の信頼関係を保ち、満足して報酬を支払って頂ければと思っています。
仕事をする上で意識していること
個人の案件では、相談者や依頼者が感情的になったり整理されていない状態で相談されるので、何を解決したいと思っているのかをくみ取ることが大切なことだと思います。
依頼者の側に立ってどこまで何ができるかを見極めてきちんと説明することを心掛けます。 それを怠ると、依頼者が「こんなはずではなかった」と思い、信頼関係を損ねます。「報告をして状況を理解してもらうこと」「時には依頼者に裁判所に来て貰って裁判官の話を聞いてもらうこと」が大切だと思います。
また、事件の解決方法は1つだけではありません。白黒はっきりつけたい人もいれば、一定程度で和解をして早期、円満解決を図りたい人もいます。どういった方法をとるかは人によって、また事件によっても違うので、取りうる方法を複数依頼者に説明して、その人にあった解決方法を目指すようにしています。
今後の弁護士業界の動向
最近弁護士会の無料の法律相談を担当したのですが、数年前より相談者が少ないようです。最近ではインターネットで情報を得たり弁護士にメールで相談したりして問題を解決する人が多くなっているのだと思いました。これまで弁護士は古い体質で広告等にはよいイメージを持っていませんでしたが、世間全般でインターネットでの情報収集が当たり前になっていて、インターネットを通じての法律相談を扱う弁護士も増え、弁護士業界も変わったなあと痛感します。世の中のスピードがどんどん早くなり、これからますます裁判も含め、スピード感のある、計画的な対応が求められていますし、新しい複雑な問題も次々に起きているので、当たり前のことかもしれませんが、社会のニーズを敏感に把握して柔軟に対応するようになっていかなければならないと思います。
今後のビジョン
30年間の弁護士生活で培ってきたものもありますが、今までの人とのつながりを大切にしながら、インターネット利用等も含め新たな人とのつながり方を考えることができたらと思います。また、もともと女性や高齢者の依頼が多いのですが、今後も家族の問題について、心配事が起きたら気軽に相談できるような、身近に感じて利用して頂けるような弁護士でありたいと思います。