石井 邦尚 弁護士 インタビュー
弁護士を目指した理由
何か具体的なきっかけがあったというよりは、職業選択の一つとして法曹を選びました。もともと高校時代までは理系科目が得意で、両親や友人は、私が文系に進むとは思っていなかったはずです。
1991年(平成3年)に東京大学文科一類に入学してから、企業への就職や官僚等よりも自分にとって魅力を感じ、法曹を目指しました。社会により密接に関わる仕事がしたいということと、独立心もあり、自分の力でやっていきたいという気持ちがあったことなどが理由です。
大学生活を振り返って
大学時代4年間は、陸上部に所属して、長距離を専門にしていました。授業は…(笑)。ゼミは、樋口範雄先生のアメリカ信託法、寺尾美子先生の英米法、西田典之先生の刑法を選択しました。樋口先生のアメリカ信託法ゼミは1期生でしたね。この頃から、アメリカ留学には漠然と興味がありました。
司法修習時代の思い出
函館で2年間の司法修習(51期)時代を過ごしました。地方での修習は楽しいですよ。修習生の数が少ないこともあり、弁護修習、裁判所修習、検察修習とも、昼も夜も手厚く指導していただけました。
初めから弁護士になるとは決めておらず、裁判官も少し考えましたが、修習2年目の7月に、弁護士会合同の就職説明会で、新東京法律事務所に採用していただくことが決まりました。
最初に入所した事務所を選んだ理由
新東京法律事務所は、当時弁護士9人で、勢いのある事務所でした。現在は、他の事務所と合併し、名前も変わって坂井・三村・相澤法律事務所となり、外国法事務弁護士事務所と提携して大きな事務所になっています。
当時は程よい規模の大きさで、事務所内の雰囲気もとても良く、比較的仕事もバラエティに富んでいたことが選んだ理由です。
初法廷の思い出
弁護士としての実感がわきました。初法廷は先輩弁護士と一緒なので、おそらく修習生気分で行ったはずですが(笑)。
今でも法廷に立つときには緊張感があります。スポーツ選手が試合に臨むときと同じようなものかもしれません。
米国コロンビア・ロースクールへの留学を振り返って
弁護士登録して3年後に、事務所を実質的に辞めて行きました。タイミングとしては、日本の弁護士としてある程度の経験を積んでから行く方がよいと思います。
仮に、弁護士になって30年以上経ち、事務所経営の経験も経たいま私が留学すれば、当時よりも問題意識なども強くなっており、より充実した学習ができたと思います。
しかし、いまでは色々なしがらみが強くなって、留学は難しいでしょう。そういったことも考えると、弁護士経験3年というのは、ちょうど良かったと思います。もっとも、今は修習を終えて弁護士になるのが12月ですので、弁護士経験2年半で行くか3年半か迷うところですね。
印象に残っている事例
守秘義務の関係であまり詳しく言えませんが、弁護士になって1年くらいの頃に遭遇した倒産案件です。経営陣の立派さに感服しました。
上場企業でしたが、創業家が強く、経営陣はいわゆるサラリーマン社長の方。次第に相談が頻繁になり、当時はその業界自体が過剰な生産能力を抱えて低迷しており、私たちの目からはもう破産は避けられないという状況で、破産の申立書も準備していました。
しかし、社長が一念発起し、民事再生を実現し、会社は清算するスキームでしたが、事業譲渡を行い、従業員の給与や退職金を確保し、可能な限り雇用も維持しました。社長を中心とした経営陣の精力的な働きにより、関係者への影響を最小限に抑えることができました。
企業外弁護士と企業内弁護士との違い
立場の違いにより、期待される役割が異なるという点がポイントです。企業外弁護士は、第三者的立場で、独立性をもった意見が言えますし、それを期待されます。例えば、経営者の善管注意義務違反が問われたときに、経営判断の原則を適用するにも、客観的な判断であることが前提です。
企業内弁護士も、実際にはきちんとした意見を言い、判断しているケースがほとんどのはずですが、それだけでは第三者の目から見た場合、不十分とされる可能性があります。また、訴訟になると、企業外弁護士の方が、法廷経験が豊富で、訴訟に関連する幅広い経験を生かすことができます。
他方、企業内弁護士は、その会社のビジネスや業界の法律を理解しているため、その会社の法務案件については専門性が高く、質も高くなります。特に大きな企業では、企業内弁護士の採用は増えていくでしょうし、そうすべきだと思います。
企業外弁護士と企業内弁護士は、期待される役割が異なるのであり、どちらかがいればよいというのではなく、両者が適切に協力しあう体制を築くことが、企業のためになると思います。
弁護士に特に求められる力
法律に関する基礎的な知識や能力があることは当然の前提として、2つ述べます。1つは、依頼者ときちんとコミュニケーションが取れることです。法律を知っているのは弁護士でも、事案をもっとも知っている依頼者です。また、弁護士の目から見て良い解決案だけれども、依頼者が納得しないという場合、依頼者を説得することも時には必要になります。依頼者とコミュニケーションを取り、信頼関係を築けることが、依頼者の利益を守る第一歩です。
もう1つは、見通しを立てながら案件に対応することです。最初の段階から、いろいろなことを予測しながら仮のプランを立て、理想的なゴールをイメージし、それが実現できそうにない場合でも、セカンドベストを考えておくことが重要です。もちろん、思った通りにはなかなか進みませんが、その時々であらたな見通しを考えていく。こうしたことの積み重ねが、トータルでは結果に大きく影響を及ぼしていきます。