裁判官と交流する?情報収集は?弁護士が語る!問題がある裁判官たちVol.3
「問題がある裁判官」に出会ったことがある4人の弁護士。彼らが出会ってしまったのは、どのような裁判官なのか。 2021年9月号の雑誌に概要版を掲載した匿名座談会(座談会はオンラインにて、2021年7月28日に実施)の完全版を3回にわけて掲載。3回目は、裁判官との交流や、裁判官の情報収集の方法について、4人の弁護士の体験談などを紹介する。 ※写真はイメージ(Graphs / PIXTA)
裁判官との交流の機会やソフトボール大会がある支部も
ーー裁判官と交流する機会はありますか?
D氏:裁判官になった同期や大学の先輩、司法試験の勉強サークルで関わった人たちなどと飲み会をすることはあります。ただ、どの程度内情を話してくれるかは個人差があります。オープンに内部事情を教えてくれる裁判官もいる一方、情報をセーブしていると感じる裁判官もいました。内部事情については、裁判所に出入りしている修習生からの情報を大切にしています。
A氏:大阪では、かつて新年会が開かれていたという話を聞いたことがあるのですが、私が弁護士になってからは開催されていないようです。私が所属している弁護士会の法教育委員会では、高校生模擬裁判選手権を開催しているのですが、その際、現職の裁判官や検察官などが採点担当者として参加してくれます。イベント後に開催される高校生も交えた懇親会の中で、裁判官と話をすることはあります。法廷の後や和解の場で、裁判官と話をすることはありますが、事件の話ばかりです。それ以外で交流することはほとんどないんですよね。
B氏:私もA氏と同じように、飲み会などに参加したことはありません。ただ、ある関西の支部にいる友人弁護士に聞いたところ、支部などでは、三庁での飲み会などがおこなわれているそうです。庁の規模が小さく、登録した弁護士の顔と名前がすぐに分かるエリアだと、わりと交流の機会があると聞きます。大阪の場合、特に本庁管内だと、交流の機会はなかなかないかもしれません。
C氏:東京の支部では、三庁でソフトボール大会を開催したり、修習生が研修所に帰る際の壮行会のようなものを開くことはあります。あと、弁護士会の新年会を開催するときは、裁判官や検察官もくるようです。
かつて、関西のある支部に1人でいたときは、裁判官や近くの弁護士と「ちょっと飲みましょう」と個人的に飲みに行くことはありました。やはり小さい支部ですと、仲間意識があるというか、法曹関係者がいないので、少し交流しましょう、という感じになりましたね。
裁判官情報はどのように集める?「対策しても、避けられない」?
ーー裁判官に関する情報はどのように集めていますか?
A氏:民事の場合は、裁判官が誰かということはあまり気にしていません。実際に裁判官の情報収集は難しく、強い先入観を持ったまま事件に入っていくのも良くないと思うので、個人的には情報収集はそんなに必要ないと思います。
B氏:私は経験から割り出しています。賢者は歴史に学び、愚者は経験にのみ学ぶんです。私は経験からしか学べませんので、当たって嫌な思いをした裁判官だけはメモして覚えておくようにしています。問題がある裁判官には「覚えとけよ!」と捨て台詞を吐くわけですが、実際に覚えているのは私の方だという。まあ、対策したからといって、避けられるわけでもないですからね。
C氏:私は新日本法規の裁判官検索で、大体の修習期や今までの経歴、どこの裁判所にいたかなどをチェックしています。裁判官は多くの場合、部総括でなければ約3年、部総括約5年で異動になります。まあ、長くても5年なので、変な人、相性の悪い人に当たってしまった場合は、できるだけ期日を伸ばして、次の裁判官に担当してもらえるようにする、くらいでしょうか。
弁護士会でも、裁判官の評価アンケートがたまに回ってくるので、どんなところが問題があるかなどを、熱心に書いています。もっとみんなで評価するシステムを作って、問題がある裁判官に早くいなくなってもらえるようになるといいんじゃないかなと思います。ただ、裁判官としても、自分の生活がかかっているはずですし、弁護士になってすぐ食べていけるわけでもないでしょうから、しがみつきたいという思いはあるでしょう。話が大きくなってしまいますが、裁判官のキャリアパスも考えたうえで、もう少しうまく裁判官が異動できるシステムを作っていかないといけないのではないかと考えています。
D氏:弁護士会の裁判官の評価システムは、いわゆる5段階評価で、たとえば和解の時にお互いの話をよく聞いているか、判決の内容が説得的かなどを、個別に評価するものですよね。項目などは単位会ごとに異なるようですが、個別の裁判官について細かく評価する単位会もあると聞いています。たくさんの弁護士から結果が集まると、やはり統計上平均点が高い裁判官と低い裁判官の差が、結構出てくるんですよね。ただ、平均点の一覧表を載せた会報について、最高裁が「一方的な評価を載せるのはおかしい」と問題視したことをきっかけに、載せなくなった単位会もあると聞いています。
地方の場合、大阪の何十倍、東京の何百倍の確率で、何度も同じ問題がある裁判官に当たってしまうことがあると思います。その場合、地元の弁護士会で、「(問題がある裁判官は)早くどこかに行かせてください」という「栄転決議」をし、地裁などに連絡することがあるようです。
【座談会に登場する弁護士】
※以下、本文中ではA〜D氏で表記
A弁護士(大阪弁護士会・57期)
主に刑事裁判で、被告人を最初から有罪と決めつけるなど、問題がある裁判官に何度も出会ってきた。刑事裁判での一番の敵は「裁判官」だと思っている。
B弁護士(大阪弁護士会・61期)
主に離婚に関する事件で、問題がある裁判官に出会ってきた。突然、裁判官にキレられたこともある。居眠り裁判官については、前向きに考えている。
C弁護士(東京弁護士会・57期)
かつては多様な問題がある裁判官に出会ってきたが、最近は会う回数が減ってきた。ただし、事実認定に問題がある裁判官に出会うことはあり、強い問題意識を抱いている。
D弁護士(60期代)
不幸にも、同じ問題がある裁判官に何度も当たってしまった経験を持つ。和解を強要したり、「なんでも有罪」にしたりする裁判官などに出会ったことがある。