弁護士過疎地の静岡県伊東市に10年以上貢献。明日も地域住民の支えに
都会を離れ弁護士が一人もいない地域へ。地元に定着し信頼関係を築く
ーー弁護士を目指した理由やきっかけを教えてください。
大学を卒業した後もしばらく実家で暮らしていて、親や祖父からは「30歳になるまでに一生続けられる仕事を見つけなさい」と言われていました。ちょうど私が26歳の頃にロースクール制度ができて、3年勉強すればちょうど30歳になる頃に弁護士になれると思い、大学が法学部だったこともあって、一念発起してロースクールに入学しました。
ーー東端先生は「ロースクール奨学金ちゅうぶ」というNPO法人の奨学金を利用されたそうですね。この奨学金は、将来的に弁護士過疎地での活動を志す学生が対象となっています。弁護士過疎地で活動したい思いがあったのでしょうか。
ロースクールの学費の負担を減らそうと思い奨学金を探していたら、たまたま「NPO法人ロースクール奨学金ちゅうぶ」の奨学金を見つけました。弁護士になって実際に弁護士過疎地に赴任をすると奨学金の返済が免除されるという条件で、面白そうだと興味を持ちました。
その法人のツアーで石川県輪島にある「ひまわり基金法律事務所(日弁連や弁護士会が弁護士過疎地に設置・運営をしている法律事務所)」を訪問したり、自分でも近場のひまわり基金法律事務所を見学したりしました。弁護士過疎地で地元住民に必要とされながら仕事をすることにやりがいがありそうだと感じ、奨学金に応募しました。
弁護士になって最初の数年は名古屋の法律事務所で経験を積み、その後、弁護士過疎地である伊東市のひまわり基金法律事務所の初代所長に選ばれました。当時の伊東市は、それまでいた弁護士が亡くなり、弁護士がひとりもいない状況でした。
私と事務員とでゼロから事務所を運営し始めましたが、地元の方々がクチコミで事務所のことを伝えてくれたり、テレビや新聞が話題にしてくれたので、少しずつ地域の方と信頼関係を築くことができました。
所長の任期終了が近づき、このまま伊東市に残るか地元名古屋に戻るかかなり悩みました。ただ、これまで築き上げた伊東市の方々との信頼や、初代所長としての愛着があり、伊東市に残ることに決めました。
ーー現在の注力分野を教えてください。
現在は交通事故・遺産相続・企業法務を注力分野としています。
交通事故に遭った場合、保険会社が提示する賠償額と、弁護士が交渉した場合の賠償額にはかなりの差があることが少なくありません。最近では、ご自身が入っている保険に弁護士特約が付いているケースが増えているので、そういった場合には自身の費用負担なく弁護士に依頼することができます。
遺産相続については、感情的な対立になってしまいどう対処したらよいかわからないといったご相談が少なくありません。例えば、親から受けた扱いの違いを幼少期から感じていたようなケースでは、物心ついたときからの長年の不満を抱えているので、離婚問題などの他の家事事件と比べてより根深いと感じます。このような相談では、まずは話を丁寧に聞いた上で、法的に可能なことと不可能なことを整理していきます。
企業法務の相談では、売掛金の回収と企業内の雇用関係に関するものが多いです。今でも業界によって口約束や注文書だけで契約を結んでいる企業があるのですが、これが後々のトラブルの元となってしまいます。売掛金の回収では、企業の方針によって、分割払いでもいいから最後まで回収したいのか、見切りをつけるために裁判や強制執行を早期にやってしまいたいのかといったことを相談しながら進めています。
雇用関係の相談では、未払い残業代や解雇に関する内容が少なくありません。中小企業では法務部がないことも珍しくありません。トラブル予防のために就業規則などを日頃から整備するようにアドバイスしたり、実際にトラブルが起きて訴えられたような場合にはその対応も行っています。
依頼者に寄り添いつつ、法律専門家としての目線を忘れない
ーー依頼者と接するときに心がけていることは何でしょうか。
まずは相手の言うことを否定せず、とにかく話を聞くことです。相談者は誰かに聞いてもらいたいと思って来ていると思いますし、相続のような感情の問題もある場合には特に、話すことでスッキリしたり気持ちの整理がついたりすることもあると思います。その上で、法律で解決できることと解決できないことについて説明します。
ただ、依頼者に共感し寄り添うことと、依頼者の言いなりになることは違うと思います。裁判例や実務を踏まえた上で、法的に難しいことは難しいと伝えるのが、法律の専門家としての役割であり責任だと思います。その後、正式に依頼をいただく際にはお金の支払いが発生するので、きちんとリスクも説明した上で納得して契約していただきたいと思っています。
ーー弁護士として活動してきた中で、印象的だったエピソードを教えてください。
子どもに関する事件は特に記憶に残ります。ある幼い双子のうち1人が父親の虐待の疑いで亡くなったのですが、当初父親は不起訴処分になりました。私は母親の依頼を受けて検察審議会に不起訴処分は不当であると申し立てをしました。病院の先生に話を聞きに行くなどして、不起訴が不当であることを立証し、最終的には不起訴不当という形で父親が起訴されて、刑事裁判になりました。
私は子どもが好きなので、子どもが泣くような事件は辛いですし、こういう事件は報酬に結びつきにくく、お金の問題ではなくこの人のために頑張ろうというボランティアの思いもあってやっているので、印象に残ります。
ーー休日の過ごし方を教えてください。
休日は娘と遊ぶことに専念しています。今はまだ「パパ」と呼んでくれる時期なので(笑)、一緒に公園に行って砂場で遊んだり、家の中でおままごとなどもします。
友人からゴルフや食事の誘いがあれば行きますが、娘と一緒に過ごせるのは小さいうちだけだと思うので、娘や家族と過ごす時間を大切にしたいです。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
現在は伊東市と、名古屋にも支店という形で事務所を構えているので、東京・静岡・愛知・名古屋あたりの東海道エリアを幅広く対応できる仕事ができればいいなと思います。
裁判所のIT化がどんどん進んでいくので、日々の業務のIT化も図りたいです。Zoomなどのウェブ会議が気軽に利用できるツールも利用して、相談者との距離を縮めたいと思います。
ーー法律トラブルを抱えて、悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
なかなか友人や家族に言えない悩みがあると思いますが、弁護士には守秘義務がありますので、話が外に漏れることは決してありません。
悩みを聞いてもらうという気持ちでまずは相談していただいて、それで心が少しでも軽くなればいいなと思います。