岡島 順治 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
大学は法学部に入ったのですが、在学中は絵を描いていて勉強はそれほどしていませんでした。司法試験を受験し始めたのは、芦部信善先生の憲法に関する本に感銘を受け、人権の仕組みが日本ですべてに行き渡ったらどんなにいいことかと思ったことがきっかけです。これを実現するには法曹になるのが一番いいと思い、勉強を始めました。
司法試験に受かってからは早く実務家になりたいという思いがありました。そうした思いからも私は即独でした。
袴田事件について
現在は第二次再審請求をしています。袴田さんは現在ご病気(拘禁症)で意思表示ができない状態になっています。いち早く医療刑務所に移転してきちんとした医療を受けさせるための努力をしています。
その一環として私が主任で、後見申し立てをやっています。後見申し立てが認められることによって、袴田さんは心神喪失ということになりますので、死刑の執行停止事由になります。こうしたことは袴田さんの安心感に繋がります。これについて今、申し立てをしていて、近々後見人の鑑定人が被後見状態かどうかを見て下さる手続きをしています。
また、訴訟本体では、弁護側のDNA鑑定と検察側の鑑定の両方が出ました。共通しているのは証拠とされている5点の衣類について、袴田さんが着ていたとされるシャツの右側に傷があるのですが、そこにある血は袴田さんのものではないという結果が出ております。
これについて鑑定人尋問を行って、検察側は「事件から40年も経っているから出なくても不思議はない、別の人のDNAが出た可能性がある」と言っている部分をきちんと反駁をして、早急に再審開始に向かいたいと思っています。
袴田事件の弁護活動の中で印象に残っている出来事
袴田事件は修習中にパンフレットを見て知りました。私が弁護士修習をしたのは浜松でした。浜松は他の先生が支えてくださった地域でした。色々な先生から事件を一緒にやろうといったお誘いや、事件を回していただいていたのですが、その内の一つとして、田畑先生が袴田事件の弁護団の一員になっていて、一緒にやろうということで浜松であった勉強会に行きました。
袴田巌さんのお姉さまの袴田秀子さんのお宅に伺い、袴田巌さんの手紙の分析を行いました。膨大にあった手紙の中で、5点の衣類が見つかった時の手紙が印象に残っています。「5点の衣類が見つかったことによって、真犯人がいよいよ動き出した!無罪に動き出した」と袴田さんはすごく喜んだ手紙をお母さん宛に出していました。
新たな証拠が見つかった時にこうした手紙を書いているわけですから、もし本当に、袴田さんが犯人であれば沈黙するはずです。それがお母さんに、自分とは無関係な証拠によってすぐにでも冤罪になるという手紙を出していました。元々記録を読んでいておかしいと感じる箇所はあったのですが、その手紙を見たことで無罪を確信しました。
そのあと、一審判決が出てガッカリした時に、袴田さんは息子さんに「心配するな、チャン(お父さん)はみんなから言われるような悪いことはしていない」と手紙を書き、お母さんにも「心配しなくてもいい。必ず冤罪は晴れるから」といった手紙を出しています。この優しさは冤罪の方の本当の気持ちなのだと思いました。
他にもたくさんあるのですが、袴田さんの気持ちがよくわかり、印象に残っています。そしてそれからずっとこの事件に関わってきています。
仕事をする上で意識していること
事件を依頼している方の目線に立つことを意識しています。どうしても弁護士というのは上からの目線になりがちなのですが、そうした意識を捨てることが非常に重要だと思っています。
例えば、クレサラの問題で言えば、単に破産の処理をしたり、債務整理をするだけでなく、依頼者の方には借金がなくなったとしてもその後の生活があります。依頼者の方がどうやって生活再建をしていくのかという点で、私が考案した誰でも付けられる家計簿を多重債務者の皆さんにやってもらっています。
依頼者の方に毎月収支をつけてもらって、それに基づいてこうした点を節約したらいいのではないか、といったアドバイスをしております。家計簿をつけ、チェックする期間は、債務整理をしている間はずっと続き、3~5年やってもらうことになります。毎月きてもらって、家計簿をチェックして直すところのアドバイスをしています。依頼者の目線に立ち、依頼者の生活を建て直すことを考えた行動の現れといえると思います。
今後の弁護士業界の動向
弁護士会の中で給費制の一昨年静岡県弁護士会の給費制対策本部の本部長代行をやってきました。ですので、弁護士の修習生の給費制の問題や法曹養成の問題、弁護士の数の問題、ロースクールの問題など、色々な問題を議論してきました。
弁護士の人数増員の問題には、プラスになる部分とマイナスになる部分が混雑しているのですが、今後弁護士になられる方については厳しいだろうと思います。弁護士増員のペースが急激すぎて、社会が思っているほど法曹の需要がなかったという事実があり、これに対する手当てが現在は自己責任になっています。ここの部分の手当てが不十分で、今後法曹になられる方には厳しい状況が続くのではないかと思っています。