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43年前に行方不明になった男性を発見 「失踪」の法的な位置づけとは?
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43年前に行方不明になった男性を発見 「失踪」の法的な位置づけとは?

長野市で43年前に行方不明になり、北朝鮮に拉致された可能性があるとされていた中島修一さん(63)について、長野県警は10月下旬、県外で発見したと発表した。

報道によると、中島さんは、1972年9月に長野市の自動車教習所に向かった後、行方不明になっていた。その後、40年以上にわたり、所在がわからなかったが、今年10月、警察官の職務質問をきっかけに身元が判明した。偽名を使って、国内の各地を転々としていた。

中島さんは、北朝鮮に拉致された可能性があるとして、民間団体「特定失踪者問題調査会」によって特定失踪者とされていた。同調査会は、中島さんを特定失踪者のリストから削除する予定だという。

一般的に、長期間行方が分からなくなった場合、法律的にはどのように扱われるのだろうか。また、残された家族はどうすればいいのだろうか。小田紗織弁護士に聞いた。

●失踪宣告を受けると「死亡した」とみなされる

「夫が妻を残して、長期間行方不明になったような場合、妻はまず、警察に失踪届などをして、夫の帰りを待つことになるでしょう」

小田弁護士はこのように述べる。ただ、「待つ」といっても限度があるだろう。妻が「住宅ローンを支払うために夫の財産を処分したい」「夫のことはあきらめて別の人と再婚したい」と考えたような場合は、どうすればいいだろう。

「そうした場合のために、夫を死亡したものとみなす『失踪宣告』という制度があります。

ひとつ確認しておきたいのは、中島さんが認定されていた『特定失踪者』というのは、民間団体である調査会の認定であり、これから説明する『失踪宣告』とは何も関係がありません」

こう述べたうえで、小田弁護士は「失踪宣告」の制度について、次のように説明する。

「おおまかにいうと、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができるのは、次の2つ場合です。

(1)行方不明者の生死が7年間明らかでない場合

(2)乗っていた船が沈没する、戦争やテロに巻き込まれるなどの特別な危機に遭遇した後、1年間生死不明だった場合。

失踪宣告がされた場合、夫は法的には死亡したとみなされます。妻が夫名義の財産を相続することができますし、別の相手と再婚することができます。

単に離婚をしたいということであれば、失踪宣告を受ける必要はなく、『配偶者の生死が3年以上明らかでない』ことを理由に裁判で離婚をすることができます(民法770条1項3号)」

●生きているのは確実だが、所在不明の場合は?

もし、後から生きていることがわかった場合はどうなるのだろう。

「失踪宣告の後に夫の生存が明らかとなったときは、この失踪宣告を取り消すことになります。今回のケースでも、中島さんの生存が明らかになったということですから、仮に中島さんが失踪宣告を受けていた場合は、取り消すことになるでしょう」

では、「生きているのは確実だが、どこにいるのかわからない」という状況でも、失踪宣告を受けることはできるだろうか。

「その場合、『失踪宣告』は使えません。しかし、財産管理については、『不在者財産管理』という制度があります。

家庭裁判所に選任された財産管理人に、夫名義の財産を適宜管理してもらい、生活費(扶養料)をもらうことになります」

小田弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

小田 紗織
小田 紗織(おだ さおり)弁護士 神戸マリン綜合法律事務所
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士を目指し活躍中。

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