細やかな気遣いで依頼者を支え、表情を晴れやかに 子どもたちへの法教育にも尽力
シンガポールの鞭打ち刑に衝撃を受ける
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
中学校を卒業するまでシンガポールに住んでいました。学校の課外授業で現地の刑務所を見学した時、鞭打ち刑がおこなわれていることに衝撃を受けました。シンガポールは日本と同じくらい治安がよい国ですが、法律を厳しくすることが抑止力になって治安が維持されていると知りました。この出来事がきっかけで法律に興味を持ち、将来は法律を扱う仕事を目指そうと思いました。
元検事の弁護士が在籍する事務所で経験を積む
ーー注力分野を教えてください。
幅広い分野に対応しており、離婚や相続などの家族問題、企業法務、債権回収から訴額が数十億円にものぼる大型の民事事件など、様々な事件を受けていますが、刑事事件の相談を受けることも他の事務所に比べれば多いです。
私が所属する事務所には元検察官の弁護士が多数在籍しています。検察官の捜査手順や、気にする部分などは、検察官を経験している弁護士にしかわからない感覚があるので、勉強になります。依頼者との打ち合わせでは、事件と関係なさそうなことでも細かく質問しています。推測ではなく依頼者から事実を引き出そうとする姿勢は見習いたいと思っています。
また、東京事務所の代表は、大型の民事事件をいくつも手がけており、特に資金調達等の事情で困っている会社の再建なども得意としています。事案が複雑になりやすい大型事件では、弁護団を組み、他の様々な経験豊富な先生の意見を聞きながら、自己研鑽しています。
ーー弁護士として心掛けていることをお聞かせください。
弁護士が当事者にならないようにすることです。依頼者に寄り添いながらも、客観的に物事を見るバランス感覚が大事だと思います。
ーー弁護士として活動される中で、特に印象に残っているエピソードをお聞かせください。
不倫した配偶者から離婚を要求された方が、「よりを戻したい」ということで相談にいらっしゃいました。
相手方にはよりを戻す意思がなかったので、依頼者には「復縁は難しいかもしれません」と説明しながら調停を進めました。相手方の代理人と密に連絡を取り、何度も話し合いを重ね,調停の場で申立人の意向や希望を伝えるよう努力しました。依頼者も精神的に追い込まれ、打ち合わせで泣いてしまったり、調停の前日に眠れなかったりする日々が続きました。
最終的に離婚となり、依頼者が当初希望した結果にはなりませんでした。しかし、調停の過程で心の整理をつけ,密に意向を確認して、進めたため、依頼者から「先生のおかげで納得のいく解決になりました。」と言っていただき、晴れやかな顔をしていました。その表情がとても印象的で、担当してよかったと思いました。
ーー離婚相談の依頼を受ける時に工夫していることはありますか?
離婚を希望していて、離婚後に名字を戻す意思がある依頼者の場合、意向を確認して,旧姓で呼ぶようにすることもあります。離婚が成立するまでは相手の名字で呼ばれることは仕方がないと思いながらも、本音では「呼ばれたくない」と思っている依頼者は多いです。ある依頼者から、「旧姓で呼んでもらったので、離婚に向けて頑張ろうと思えた」と言われました。それ以来、打ち合わせの段階で希望する方にはそのように対応しています。
法教育を通して子どもたちに伝えたいこと
ーー漫画「こども六法 開廷!こども裁判」の監修をされていますが、こだわったところをお聞かせください。
著者である山崎聡一郎さんは、制度や法律を紹介するだけの本ではなく、法律や制度がなぜできたのかを知ってもらって、それを実生活に活かしてもらえるような内容にしたいという熱い思いがあったので、法律的には正確でありながらも、辞書的な説明にならず、子どもたちにこちらの意図が伝わるよう心がけました。いじめ問題など子どもたちにとっては深刻な問題も法律が助けになることがあるんだと感じてもらい、自分たちで問題解決ができるということを理解してもらえるように工夫しました。
執行猶予制度の記載は、特にご指摘させていただきました。なぜ、犯罪者が刑務所に入らず、社会に出てきていいのか?という質問は、出張授業などで学校に行くとよく聞かれます。私がシンガポールの鞭打ち刑に疑問を持ったように、子どもたちの疑問に真摯に答えるため、単に制度の説明だけにするのではなく、執行猶予という制度がなぜ作られたのかを説明できるよう、工夫させていただきました。 法律は社会の変化にあわせて、みんなで決めるべきものです。子どもたちには、既存の法律がすべて正しいとは思わず、今ある刑罰に疑問を持ってもらい、現行の法律や制度がなぜあるのか、残すべきなのかについても、考えてほしいと思っています。
弁護士の仕事に通じる「囲碁」の面白さ
ーー趣味を教えてください。
今の事務所に入ってから囲碁を始めました。関西棋院のプロ棋士が教えに来てくれて、アマチュアの初段になりました。
「布石を打つ」という言葉は囲碁が語源なんです。将来に備えて準備をするという意味ですが、陣取り合戦である囲碁では常に先を見通すことが大切です。素人と上手い人とでは、見えている範囲の広さが全く違います。
先を見通すことは、弁護士としても意識すべきことだと思っています。依頼者の話や自分に見えているものが全てではないという感覚は、常に客観性を持つべき弁護士にこそ必要だと思います。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
紛争を解決するスキルを上げることはもちろんですが、法教育の活動にも力を入れていきたいです。
弁護士の役割は、依頼者の話を聞いて法律的に解決することです。紛争が大きくなってから弁護士に相談される方も多いですが、できれば問題が小さいうちに、当事者間で解決できる方がよいと思います。そのためには、子どもの頃から、紛争を解決するための考え方を知っていることが重要です。紛争を自分で解決するために必要な知識やきっかけを提供する活動を、今後も続けたいと思っています。
ーー法律トラブルを抱えて悩んでいる方へメッセージをお願いします。
今は24時間、誰にでも相談できる世の中だと思います。悩みがある方は、弁護士に限らず、信頼できる誰かに相談してほしいです。悩みが法律問題であれば、弁護士が解決のお手伝いをします。相談した結果、弁護士が入らずに解決できることもあると思います。それでも大丈夫なので、気軽に相談してください。