
民事事件を中心に対応 非常勤裁判官や法律相談ボランティアの豊富な経験を活かし、最善の解決に導く
検事に憧れ法曹の世界へ。司法修習で弁護士を選択
ーー弁護士を目指した経緯を教えてください。
高校2年のとき、父親の仕事の関係で、検事をしている方と接する機会がありました。食事をしながら「検事の仕事は素晴らしいぞ」というような話を聞いて、検事や裁判官、弁護士という法曹の世界があることを知ったんです。
それまでは数学や物理が好きだったので、なんとなく将来は理系に進むことを考えていましたが、文系を選び、大学は法学部へ。検事を目指して司法試験に挑みました。
何とか司法試験に合格。その後の司法修習では、検察官や弁護士、裁判官の横について実務を学びました。
当時の私は、検事というと“特捜検事”のイメージが強く、刑事事件ばかりが頭にありました。実務修習をするなかで、さまざまな民事事件が裁判所に持ち込まれていることや、その半数近くが訴訟上の和解で解決することを知りました。
刑事事件は刑務所に入るか入らないかという判決となりますが、民事は和解など話合いで解決できる可能性もあり、そこに魅力を感じました。弁護士として解決に助力したいと思い、最終的には、検事ではなく弁護士になることを決めました。
ーー学生時代はどのような生活を送っていましたか?
大学では友人たちと交流したりバレーボールのサークルで活動したりしながら、図書館で勉強に励んでいました。
下宿は四畳半の太陽がほとんど当たらない部屋で、ダンボール箱を机代わりに、電気スタンドを置いて勉強をしていました。当時は家計簿をつけていて、月3万円で下宿代や食費をやりくりしていました。今ではいい思い出です。
学生時代の出来事で印象に残っていることがひとつあります。
検事はどんな仕事をするのか、直接話を聞きたいと思い、大学近くの検察庁へ行ったんです。受付で「検事さんに会いたい」と伝えたところ、相手にされなかったのですが、どうしても話をお聞きしたいと粘っていたら、当時の修習担当の検事が、別の日だったらと了承してくださいました。
後日伺った際、その方が部屋に入れてくださって、仕事のエピソードや試験勉強のコツなどを聞かせてくれました。おまけに、近くにある県庁の最上階のレストランで食事もご馳走してくださったんです。検事の話を直接聞ける機会はそうそうなく、とても刺激となる出来事でした。
依頼者の話をよく聞き最善の解決策を導き出す
ーー注力分野を教えてください。
全体の3分の1は相続や遺産分割、遺留分に関わる事件です。
相続問題は家族や親族とのトラブルです。相続人同士に力関係があるので、不公平に遺産を分けられても、泣き寝入りしたり、仕方ないと諦めてしまったりする方もいます。
そうならないように、私は実質的に公平な相続の実現を心がけています。たとえば、亡くなった方の世話をしていたなどの事情がある人には寄与分をプラスすることを主張したり、生前に財産をもらっていた人には相続分からその分を引いてもらったりして、依頼者が正当な取り分を受け取れる遺産分割を目指します。
相続以外では、破産手続きや不動産問題、賃貸借問題、離婚なども引き受けています。離婚関係は女性からの依頼が多いですね。
ーー仕事をするうえで心がけていることを教えてください。
まずじっくりお話を伺うことです。
基本的には、依頼者に聞くことはだいたい決まっています。ただ、型どおりの質問をするだけでは、どういう形で解決したいかという“思い”の部分がなかなかつかめません。
話を伺いながら、本人にとって何が一番か、最善は何かを考えることを大切にしています。
依頼者本人の「こうしたい」「こういう思いで解決したい」という部分を尊重しながら進めていきます。訴訟してでも頑張りたいという人もいれば、訴訟はできるだけやりたくないという人もいらっしゃいます。みなさんそれぞれ、生きてきた人生が違いますからね。思いや希望を踏まえながら最善の形を考えるようにしています。
もうひとつは、悩みに寄り添うことです。
そもそも弁護士に依頼することは一生に一度あるかないかのこと。相談に来るのも勇気がいると思います。依頼していただいたからには、悩みや不安な気持ちにしっかり寄り添いながら、解決の方向へ導いていきたいと考えています。
私が学生のころ、賃貸借の関係で悩み、弁護士に電話で相談したことがありました。そのとき、弁護士の対応がそっけなくてガッカリしたことを今でも覚えています。依頼者にしてみれば、勇気を出して訪ねたのに、弁護士から冷たく対応されたら本当にショックですよね。そんな経験もあって、依頼者に寄り添う姿勢は大切にしています。
非常勤裁判官を務めた経験が弁護士業にも役立っている
ーー弁護士をしてきたなかで、印象に残っている出来事やエピソードを教えてください。
4年間、非常勤の裁判官をやらせていただいたことです。週に1日、大阪家庭裁判所で家事調停を担当しました。
非常勤裁判官は、2人の調停委員とともにどのように解決していくかを話し合い、中立公平な立場で事件解決に当たります。ふだんの弁護士業では、依頼者の利益を最大限に考えて解決をはかりますが、裁判官はどちらにも偏りません。4年間で400件にのぼる多種多様な事件を担当し、双方の言い分を中立・公平な立場で事件を見る経験ができました。弁護士として事件解決までの見通しを立てたり、トラブルを落ち着かせる最善策を考えたりするうえで、とても役に立っています。
また、14年ほど前から、弁護士仲間とともに離島での法律相談のボランティアをおこなっています。
弁護士がいない島に住む人が法律相談をしたいと思ったら、近隣の島や都市部まで飛行機や船で行かなければなりません。お金も時間もかかります。不便な状況を少しでも改善するために、日本全国のさまざまな島を訪ね、島民と役場の方に向けて講演と法律相談を続けています。
いろんな島に行きました。喜界島や徳之島、与論島、沖永良部島、北大東島に南大東島、種子島に屋久島…。東日本大震災のときは東北の離島にも行きました。隠岐の島をはじめ、中国地方エリアにも足を運んでいます。たくさんの島で法律相談をおこなってきて、興味深いと思うのは、相談内容は都会とほとんど変わらないこと。交通事故もあれば、離婚問題や相続もあります。どこにいても人と人のトラブルは同じなのかもしれません。
もう1つ印象深いエピソードとしては、2014年に成立した「過労死等防止対策推進法」の当初のたたき台の作成に携わったことです。私の手が離れてからかなりの年月が経ちますが、最初に担当できたことは意味のあることだと感じています。
プロレスや和太鼓など多彩な趣味が仕事の原動力に
ーー趣味を教えてください。
いろいろありまして、1つはプロレス観戦です。
学生の頃、タイガーマスクに衝撃を受けて、プロレスにハマってしまったんです。事務所を大阪府立体育会館の近くに開いたのも、プロレスの興行があったから。すぐ見に行けるという不純な動機です(笑)。特に好きなのは新日本プロレスで、テレビ放送を録画をして週2回は観ています。
和太鼓もやっています。教室に通い始めて5年。妻に「プロレス以外にも趣味を持った方がいい」と言われて始めました。太鼓をたたくのは非常に楽しいです。年に1回の発表会に向けて練習しています。
あとは健康のために、スポーツセンターでヨガとストレッチポールのレッスンも受けています。
城郭も大好きで、まずは日本の“100名城”を回ることを目指しています。今は半分くらい行きましたね。100名城のスタンプを貯める冊子を持って出かけています。
ーー今後の展望を教えてください。
今まで通り、ひとつひとつの事件に丁寧に向き合い、解決に向けて進めていくことです。
あとは新しいことを取り入れながら対応していくことでしょうか。最近はメールなどのデジタルツールを使って連絡をすることも増えました。私は昔人間なので手書きが多いのですが、新しいものも覚えて仕事に活かしたいと思っています。
ーー最後に、法律トラブルを抱えて悩んでいる方へメッセージをお願いします。
生きていれば、予期しないトラブルに遭遇したり巻き込まれたりすることがあります。そんなとき、ひとりで抱えて悩んでしまうかもしれませんが、弁護士にご相談いただけたら解決に向けてお手伝いできます。
弁護士事務所に電話をするなんて、勇気がいることだと思います。でも勇気をもって電話をしていただいたら、解決への道が自然と開けてきます。お気軽にご相談ください。