気仙沼市の任期付公務員経験が転機、三陸地域を支える弁護士に 依頼者に寄り添いながら解決目指す
7回目の挑戦で司法試験に合格、法テラススタッフから気仙沼市に出向
——弁護士を目指したきっかけを教えてください。
私が大学を卒業した1999年ごろは、就職氷河期でした。就職活動をしてもなかなかうまくいかない人が、私を含めて周りにたくさんいました。そんな中で、自分は何ができるのか、何が得意なのかを振り返ったんです。就職試験でもペーパーテストは通っていましたから、自分の強みはこれだとあらためて自覚し、本格的に司法試験に取り組み始めました。
大学卒業後は塾講師として幅広い年齢の子ども達に接し、一時期は現場で日雇いの肉体労働も経験しながら勉強を続け、7回目の挑戦で司法試験に合格しました。遠回りではありましたが、結果的に社会的な視野を広げることにもつながったと思っています。ただ、長い受験生活では家族にも負担をかけていましたし、途中で受験を辞めようかなと思ったこともあります。それでも、論文試験で結果を出せるようになり、「あともう少し頑張ってみよう」と勉強を続けてよかったと思っています。
——今の事務所の前は法テラスや気仙沼市の任期付公務員として働かれていたのですね。
最初は山口県の法律事務所で1年間修行し、山口県の法テラスでスタッフ弁護士として勤務しました。スタッフ弁護士としては、個人の離婚問題、相続問題、交通事故事件、刑事事件などを担当しました。
2011年に未曾有の災害である東日本大震災があり、法テラス本部から「被災自治体である気仙沼市に任期付公務員として出向しないか」と打診がありました。
当時、日弁連と法務省と法テラスが連携し、被災地支援のために、自治体に弁護士を派遣する動きがありました。私が気仙沼市にいく前にも、岩手県庁や宮城県庁、石巻市役所などにすでに弁護士が派遣されていたんです。
震災の現地で地元の人の助けになりたいと思い、2013年から3年間出向しました。市役所は基礎自治体として、地域の人々の生活に広く関わっており、それまで考えたことのない法律問題にも数多くぶつかることになりました。また、弁護士は単独で動くことが多いのですが、組織の中で弁護士としての知見を活かして多くの職員と協力する貴重な経験もさせていただきました。市役所での経験は、私の弁護士としての人生に大きな糧となりました。
私が出向したときは、宮城県と岩手県を太平洋側でつなぐ三陸自動車道がまだできる前で、予定地の用地取得が大きな課題となっていました。予定されていた用地の地権者が1000人以上に膨れ上がっていたのです。どうすれば速やかに地権者の方々と交渉ができるのか、法的な検討を重ねたことが印象深く残っています。
遺産相続で多い「親のお金の使い込み」兄弟争いの解決方法は?
——注力分野について教えてください。
離婚・男女問題、遺産相続、企業法務の3つです。
離婚・男女問題のご相談は、コンスタントにあります。依頼者の男女比は半々くらいで、女性からは「離婚したい」「夫が誰かと浮気をしているようだ」、男性からは「妻が子どもを連れて出ていってしまった」というご相談が多いです。
離婚・男女問題に限らずですが、法律の仕組みというのは誰でも知っていることではありませんし、常識とも異なるところがありますので、法律を知らない方にも腑に落ちるように丁寧にわかりやすくご説明しています。例えば、離婚に関していえば、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3段階あることや調停とは何か、調停と裁判の違いなどをご説明するようにしています。
遺産相続は、相続発生後のご相談が多いです。また、「遺言書を作ってほしい」という依頼もお受けしています。
遺産相続で特によくある相談は、地元に残った兄弟と都会に出た兄弟とで争いになるケースです。地元に残って親と一緒に暮らしている方から「親のお金を使ったことで、都会に出た兄弟から調停を起こされた。どうしたらいいだろうか」とか、逆に都会に出た方から「地元に残っている兄弟が親のお金を使っているようだ。どうしたらいいだろうか」という相談があります。
亡くなった親の預金通帳の履歴は、相続人であれば開示してもらうことができます。お金が引き出されていた時期にすでに親が寝たきりになっていたり認知症になっていたりして、自身で使いようがなかった場合、お金を使い込んでいたという証拠になります。
こうしたケースでは、まず文書を送り、事前協議ができないかをはかります。難しいようでしたら、調停を申し立てることになります。亡くなられた方のお金を生前に無断で使い込んでいた場合、相続手続きとは別に、損害賠償請求等の訴訟を起こすこともあります。和解を目指すのか、訴訟も辞さないのか、依頼者の要望に応じて方針を決めていきます。
企業法務は、地元企業の顧問としての仕事の他に、市役所の顧問先として市役所の相談対応もしています。市役所の相談は民間と共通する部分もあり、職員の勤務上の問題やハラスメント関連、情報公開に関する相談などがあります。
地元経済を支える企業の助けになりたい
——今後の展望を教えてください。
日々、一生懸命地元の方々のご相談に応えていきたいです。割合としては個人の方のご相談が多いですが、水産業や建設業、不動産業、医療法人など、地域の様々な事業者の方々からもご相談いただいています。従業員との労働問題、経営陣内部の紛争、株式の譲渡による事業承継、いわゆるクレーマーへの対応など日々手掛けております。
地元の経済を支えている企業の助けになることで、地域の発展につながることもあると思います。気仙沼をはじめ三陸地方は人口がどんどん少なくなっていて、明るいニュースが少ないところですが、自分なりに少しでも力になれたらなと思っています。
——休日はどう過ごされていますか。
休日はドライブや読書をしています。地元に映画館がないので、仙台や石巻まで足を伸ばして観に行ったり東北各地の温泉巡りをしたりしています。地元ロータリークラブにも所属し、奉仕活動に参加することもあります。出身は横浜市ですが、気仙沼市に住んで10年になりました。住めば都で、とても過ごしやすいところです。地域の方々にはとてもよくしていただき、ありがたく思っております。
——法律トラブルを抱えて、悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
すでに問題が起きてしまった場合には、目をつぶっていても問題はなくならないことがほとんどです。自分では解決できそうにない場合には、あまり時間をおかずに、ためらわず弁護士にご相談にきていただきたいです。
法律の手続きには、時効など取り返しのつかないものがあります。弁護士に相談するのが1日遅かっただけで結果が大きく異なることもあります。
弁護士は話し合いを交通整理しながら進めることも得意分野です。個人間で話し合いをしていると、できないことを約束してしまうなどして、余計にこじれてしまうことがあります。
法律に詳しくないから相談できないなどと思う必要はありません。誰にでもわかりやすくご相談に乗るようにしていますので、ご遠慮なくご連絡ください。