まずは依頼者の苦しみを受け止める。夫婦間のもつれを解きほぐし、心の重荷を降ろせるようサポート
複雑に絡んだ糸のような夫婦の歴史を解きほぐす
ーー離婚案件を多く扱っているそうですね。
弁護士の中には離婚案件は扱わないという人もいますが、私は離婚案件にやりがいを感じているので、積極的に引き受けています。相談に来る方は30~60代の方が多く、男女比はほぼ半々です。
離婚というのはそれぞれのご夫婦の歴史がありますので、本当に千差万別です。依頼者の話を深く聞いて、状況を把握し、要望を整理するところから始まります。私はそういう作業が苦にならないというか、そういうことがやりたくて、弁護士になったようなところがあるのです。
高校時代に「人と人との問題を調整する」という部分に法律のおもしろさを感じ、大学で法学を学んで弁護士になりました。裁判官や検事になる選択肢もありましたが、色々な案件にかかわれることと、何よりも依頼者との距離の近さを魅力に感じて弁護士を選びました。
苦しい気持ちに共感して受け止めるところから始める
ーー依頼者とのコミュニケーションで心がけていることを教えてください。
離婚に限った話ではありませんが、我々もプロですから、必要なことだけ質問してお答えいただくだけでも、仕事ができないわけではないのです。
しかし私としては、法的に関係ない、感情的な部分も含めて話していただくようにしています。依頼者の気持ちを受け止めたうえで、法的にどういうことができるのかという説明に入っていきます。
依頼者は苦しさを抱えて我々のところへ来ています。苦しい気持ちに共感して、私が依頼者を知るだけでなく、依頼者にも私を知っていただいて、一緒に問題を解決していくパートナーなんだと認識していただくことが大切です。
依頼者との信頼関係を築いてこそ、いい解決ができると考えています。
依頼者の非を責めるのではなく、冷静な第三者としてサポートする
ーー離婚案件では、例えば不倫をして離婚を求められている人や、配偶者に暴力をふるった人も依頼者になる可能性があります。そのような方にも共感していくのですか。
離婚の原因となるような行動をした方の中には、「弁護士に怒られる」と思っている方もいるでしょう。しかし、私はその方の行動の是非を判断する立場にありません。共感とは少し違うかもしれませんが、不倫したことや配偶者を傷つけたことを責めないようにしています。
不倫や暴力を自分がしたと認めているなら、慰謝料の相場や今後の対応方法をお伝えするなど、相手方との話合いを円滑に進めるためのパートナーとしてサポートしていきます。
依頼者の中には、自分の行動がきっかけで相手方から離婚を求められたけれど、「離婚したくない!」と変化を受け入れられず頑なになっている方もいます。そんなとき、自分の非を責めず、第三者目線で冷静なアドバイスをしてくれる人間がそばにいることで、次第に感情が落ち着き、最終的には変化を受け入れていけるようになります。
離婚後のトラブル予防策もアドバイス 万全の態勢で新たな一歩を踏み出せるように
ーー離婚に伴い、相手方との間で様々な条件を決めることになりますが、必ずしも要望が通らないこともありますよね。
はい、調停や裁判ですべての要望を通すことはなかなか難しいです。
そこで大切になるのが、依頼者の要望の優先順位をはっきりさせることです。解決までのスピードや慰謝料の額、養育費の支払い、子どもとの面会など様々な要望がある中で、何を優先的に実現したいか、依頼者にヒアリングします。
見通しが厳しい場合はその理由を説明して、優先順位を変えるかどうか考えます。依頼者と一緒に、ベストが無理ならベターを探していくことを心がけています。
また、離婚成立後も、「養育費の支払いが滞ったらどうすればいいか」といった、今後起こりうる問題に対して予防策を伝えています。
どの依頼者も、案件終了後は声のトーンが明るくなったり、表情が柔和になったりするのです。重荷を降ろした、解放されたという安堵感が伝わってきます。「自分の仕事がこの人の役に立った」と、私自身もほっとする瞬間です。