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YouTube「エルサゲート」アンパンマンに見せかけ暴力動画…子どもを守る方法は?
YouTubeより。「エルサゲート」問題は日本の子どもたちにも及んでいる。

YouTube「エルサゲート」アンパンマンに見せかけ暴力動画…子どもを守る方法は?

東京都内に住む30代の男性は先月、6歳の娘が見ていたYouTubeの動画に驚いた。娘が大好きなアニメのキャラクターたちが途中から半裸になり、性的なふるまいをしていたのだ。動画は明らかに素人が制作したアニメで、一般的で無害なタイトルやサムネイルから、その内容を想像することを難しい。男性は慌てて再生を止めたという。

こうした動画は「エルサゲート」と呼ばれ、海外で問題となっている。子どもに人気のキャラクターを登場させた不適切な動画で、子ども向けと見せかけながら、内容は暴力や排泄、性的表現などが含まれている。子どもがキャラクターやアニメの動画を見ているうちに、YouTubeの機能である関連動画の自動再生でいつの間にかエルサゲート動画にたどり着いてしまうのだ。

昨年から欧米で問題視されるようになり、YouTubeを運営するGoogleは昨年末から対策に乗り出しているが、現在も多く見られる。しかし、スマートフォンやタブレット端末を利用している保護者にとって問題は深刻だ。では、子どもをエルサゲート動画から守るためにはどのような方法があるのだろうか?

●アンパンマンやしまじろう、ドラえもんのエルサゲート動画も

エルサゲートとは、こうした動画によく用いられるディズニー映画「アナと雪の女王」の「エルサ」と不祥事を表す接尾語「ゲート」を合わせた造語だ。2017年ごろからその問題が欧米のメディアで報じられるようになった。ディズニーのプリンセスやミッキーマウス、そのほかアメリカの人気アニメのキャラクターが多く使用されているが、最近では、アンパンマンやしまじろう、ドラえもんなど、明らかに日本の子どもをターゲットにした動画もみられる。

写真の動画では、公式動画をよそおい、サムネイルにはドラえもんやアンパンマン、クレヨンしんちゃんなど子どもに人気のキャラが登場していた。ところが、再生してみると全く関係ないキャラクターが暴力的な行動に出るというものだった。こうした動画には自動再生広告が挿入されており、投稿者は再生回数に応じて収益が得られる仕組みだ。

Googleによると、YouTube では昨年6月以降、エルサゲート動画を含め、暴力的かつ過激な動画 を15 万本以上削除したという。また、弁護士ドットコムニュース編集部の取材に対し、昨年から今年にかけては、「コミュニティガイドラインの強化、ファミリー向けコンテンツの不適切な利用に対する収益化の停止、そうしたコンテンツに対する年齢制限の適用」などの対策を行なったと回答。YouTubeには子ども向け動画アプリ「YouTube Kids」があるが、そちらでもエルサゲート動画が再生されるという指摘を受け、当該動画の削除も実施しているとした。

また、Googleでは子どもの安全を守るための関係機関とも密接に連携し、子どもに害のある行為や問題のあるアカウントは法的機関に報告。今年は、Google 全体でポリシーに反するコンテンツに対応する人員を1万人以上に拡大する目標を掲げている。

●「保護者が動画を選ぶ」「技術の力を活用する」ことで対策

しかし、そうした対策も追いつかず、エルサゲート動画はいまだあふれている。「保護者が子どもにスマートフォンやタブレット端末を使わせなければいい」という意見もあるが、優良コンテンツも多く存在する上、「ワンオペ育児」や公共交通機関を利用する際など、子どもが静かにしてくれるツールに頼らざるをえない育児の現実もある。

冒頭の男性も、妻は仕事で早く出勤するため、1人で娘の朝ごはんの準備していたほんの10分間、娘が自動再生機能でエルサ動画を見てしまった。「その後、YouTubeで検索したところ、同様の動画がたくさん出てきたため、もうYouTube自体にアクセスできない設定にして、他の動画コンテンツを見られる有料サービスを使うようにしました」と話す。

では、男性がとった方法のように、具体的にはどのような対策が望ましいのだろうか。専門家などで構成する「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」に聞いたところ、まずは「保護者が子どもが見る動画等の内容を保護者が把握・管理し、良質でふさわしいものを選ぶ」「子ども一人で動画を見せない(機器の渡しっぱなし、動画を見せっぱなしにしない)」ことが大事という。

事務局では、「その上で、YouTube Kidsや知育動画、ビデオ・オン・デマンドの子どもチャンネルなど、子ども向けコンテンツに特化したサービス、機能制限の活用(見せたい動画のみに限定する機能の設定や不適切な動画を制限する機能の設定)、コンテンツのレイティングなどコンテンツ提供者からの情報提供などを参考にするなど、技術(各種サービス)の力を活用するとよりよい選択ができる」と助言する。

同研究会では、3歳から6歳の未就学児のスマホやタブレット、ゲーム機の使わせ方について、1日の利用時間や保護者の関わり方、機器の与え方などを確認する「セルフチェック確認シート」を公開(https://www.child-safenet.jp/wordpress/wp-content/uploads/checklist_all.pdf )。適切な利用を勧めている。

(弁護士ドットコムニュース)

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