「依頼者と一緒に、前に歩いていきたい」弁護士として、母親として、離婚や子どもの問題解決に力を尽くす
「同じ母親だからこそ、追い詰められた母親の気持ちが理解できた」
ーー弁護士になるまでの経緯を教えてください。
大学時代に「将来の選択肢として、弁護士という職業もいいかな」とチラッと考えた時期はありましたが、本気で目指そうとは思っていませんでした。
結婚して、専業主婦として子育てしながら生活していた頃、阪神淡路大震災が起こりました。その時、震災に遭った子どもたちの心をケアする、臨床心理士という仕事があることを初めて知ったんです。「私もそういう仕事がしたい」と考え、大学の心理学講座を聴講するなど精神心理学の勉強を始めました。
同じ頃、母親が我が子をベランダから落としてしまうというショッキングな事件が起こり、これをきっかけに母親の虐待問題がクローズアップされるようになりました。
私自身、思い通りにいかない我が子と、四六時中向き合っている時期でした。もちろん、心から子どもを愛していましたが、心身ともに限界で、「子育てが辛い」と感じている頃だったんです。
この気持ちは、おそらくほとんどの母親が経験しているでしょう。我が子をベランダから落としてしまった母親も、きっと心身ともに極限まで追い詰められていたんじゃないか、と思いました。その母親の辛い苦しい気持ちが、切ないほど理解できたんです。
当然、子どもをベランダから落とすなんて、絶対にやってはいけないことです。母親が子どもの命を奪う権利などありません。そんな悲しい事態に陥ってしまう前に、何とか軌道修正するお手伝いがしたい。追い詰められた母子たちを、具体的な社会制度や法律を用いて、心身ともに助けてあげられるような仕事がしたい。そういう仕事ができるのは弁護士だ、と考えるようになりました。そして、精神心理学の勉強から、司法試験の勉強へとシフトチェンジしたんです。
しばらくは旧司法試験の受験勉強をしていましたが、途中でロースクール制度が始まったので、北海道大学の法科大学院に入学しました。その後、晴れて新司法試験に合格し、弁護士として仕事を始めました。
ーー子育てと勉強との両立は大変でしたか。
あまり大変とは感じなかったですね。育児のストレスが溜まれば勉強に集中し、逆に、勉強に疲れたら子どもと遊んで楽しむようにしていました。うまくバランスを取りながら両立できていたと思います。
依頼者の思いを真摯に聞き取ることが、解決への始まり
ーー注力分野と、仕事で心がけていることを教えてください。
女性から依頼を受けることが多いので、扱う分野としても離婚などの家事事件が多く、自然と注力するようになりました。
仕事をするときには、「依頼者の思いを真摯に聞き取る」ということを一番大切にしています。悩みを少しでも軽くできるように、心の内をじっくり聞くよう心掛けています。依頼者が、相談に来たときより前向きな気持ちになってくれたら、私も嬉しいです。
ーー弁護士に相談に来る人は緊張していることが多いと思います。
確かにはじめは緊張している方が多いですね。でも、話しているうちにだんだん緊張がとけてくるようです。「弁護士の先生ってもっと威圧感があるのかと思ったけど、先生は全然違いますね」と言われることもあります。若い依頼者なら自分の母親のように、同世代の依頼者なら友達のような存在として、感じてもらえているのかもしれません。
ーー子育てをしてきた経験が仕事に活きていると感じますか。
はい。たとえば、子どもがいる女性から、離婚の相談を受けたときです。離婚によって子どもにどのような影響が生じるのか、子どもの気持ちをケアするにはどうすればいいのか…といったことを、子を持つ母親として、依頼者と同じ目線で考えられます。
離婚後の子どもとの生活設計を、細かいところまで詰めながら、同じ母親同士で一丸となって組み立てていくときに、「子育ての経験があってよかった」と思います。
ーー弁護士として活動してきたなかで、印象に残ったエピソードはありますか。
全ての案件が印象に残っています。過酷な状況に置かれて、生きていること自体がとても大変な人も、たくさん見てきました。辛い日々を送っている方々を助けるために、少しでも自分の力を役立てることができればと思っています。
「山に登ると、大自然に抱かれて、ただただ安らげる。大切な時間です」
ーープライベートについても伺います。休日はどのように過ごしていますか。
まずは溜まった家事を片付けて、その後は趣味の時間です。夏は山登り、冬はスキーを楽しんでいます。
山には1人で行きます。余計なことを考えず、ただただ自然の中にいることで、とても安らげるんです。一方で、山では危険に遭遇することもあるので、緊張感やスリルも味わっています。山登りを始めたのは弁護士になってからです。いい趣味に出会えました。
スキーは子どもの頃からゲレンデスキーを楽しんでいますが、山登りを始めたこともあり、最近は「バックカントリーも気持ちいいだろうな」と考えたりします。さすがに、北海道の雪山で1人でバックカントリーをするのは危険だと思うので、なかなか実行には移せませんが。
最初の一歩を踏み出すことで、進むべき道が見えてくる
ーー今後の展望についてお聞かせください。
今までは、経験を積むためにあらゆる事件を受けてきました。でも、そろそろ案件を選別して取り組んでいこうかと考えています。特に、女性に関する案件に注力したいです。
積極的に関わりたいと思っているのが、DVシェルターに避難した方々への支援です。たとえば、暴力をふるう配偶者との離婚や婚姻費用請求など、シェルターを出た後の生活環境を整えるためのお手伝いができればと考えています。シェルターの職員の方と協力して取り組みたいですね。
また、現在はスクールロイヤーとして、学校で起こる問題の解決にも携わっています。子どもに関するいろいろな相談が舞い込んでくるのですが、一見不登校の問題に思えても、よくよく事情を聞いてみたら虐待案件だった、というケースもあります。学校やスクールカウンセラーと協同して、子どもの虐待をなくす活動にも力を入れたいと考えています。
ーートラブルを抱えて悩んでいる人のために、先生からメッセージをお願いします。
弁護士に相談することは、とてもハードルが高いことだと思います。でも、悩みを話してもらうことで、それまではモヤのなかにいるような気分だったとしても、パッと視界が開けて目の前がクリアになることがあります。自分が進むべき道も、見えてくるかもしれません。
最初の一歩は、非常に勇気がいると思います。でも、その一歩を踏み出してもらえれば、あなたがその先へ進んでいくために、私たち弁護士も一緒に歩いていきます。ぜひ、ひとりきりで悩まず、法律相談に来てくださいね。