「私、行きますよ」依頼者のもとに自ら足を運び、高齢者・障害者の支援に取り組む
様々な文化圏で過ごした少年時代
ーー弁護士を目指したきっかけを教えてください。
大した理由ではないのですが、父に「法学部はつぶしが利くようだし、就職するときも有利なんじゃないか」と言われたことです。高校時代は文学部志望で、弁護士になるなんてまったく考えていませんでした。ただ、第一志望の国立大学に落ちてしまい、浪人するのも嫌だなと思っていたところ、父に法学部を勧められたんです。
なので、大学入学後も「弁護士になるぞ!」と考えていたわけではありません。でも、大学入学の直前か入学直後にロースクールの制度ができて、その流れに乗る形で「弁護士を目指してみようかな」と考えました。
ーーお父さんと、時代の影響があったんですね。
自分でもなぜ弁護士を選んだのか、いまだによくわからないのですが、就職するつもりがなかったことが1つの理由だと思います。中学生ぐらいからずっと「組織には入りたくないな」という気持ちがありました。
ーープロフィールでは「札幌で生まれ、幼少期はインドネシアで過ごし、中学時代にはイギリス」…と様々な文化圏で育ったと書かれています。なので、てっきり陽気な方だと思っていたのですが、話してみると、「物静かな学究肌」という印象です。
子どもの頃から読書中毒で、友達の家に行くより家で読書しているほうが好きでした。今でも、トイレに行くときも本が手放せないようなところがあります。ただ、みんなでサッカーしたりするのも好きなので、一言では表せないですけどね。
いろんな文化圏で生活した経験は、自分の人格形成に何かしら影響していると思います。とくにロンドンの暮らしは刺激的でした。現地では日本人学校に行っていたのですが、周りはほとんどが東京出身。僕は札幌の片田舎の子どもだったので、すごく刺激を受けましたね。それまで勉強の意欲も全然なかったのですが、東京の塾に通ってきた友達に囲まれて、「負けたくない」とようやく勉強をし始めたりして。
ーーその頃に勉強するための体力が身についていないと、司法試験は突破できないですよね。
そうですね。根性というか、頑張る意欲が培われた気がします。
服装や言葉遣い「あらゆるところで弁護士への敷居を下げたい」
ーー注力分野を教えてください。
事務所としては分野を絞らずオールマイティに引き受けていますが、個人的に力を入れているのは高齢者および障害者に関連する分野です。行政と連携していろいろな仕事をしています。具体的には、本人に代わって金銭管理をしたり、成年後見制度などの各種法的制度の利用、虐待対応などをおこなっています。
ーーそのような分野に注力するようになったきっかけは?
高齢者問題を取り扱っている機関の方と仕事をすることが多かったからです。一緒に仕事していると、「実はこういうことで困っている方がいて、何とかしてくれませんか」と相談を受けることが多く、力を入れるようになりました。
僕は、あまり事務所に行かないタイプの弁護士です。相談を受けるときは、事務所に来てもらうのではなく、「私、行きますよ」と本人のもとに足を運ぶことが多いです。高齢者・障害者の中には、事務所に来られない方も多くいます。雪が降ると交通機関が麻痺しやすいという、札幌ゆえの特徴もあります。だからこそ、できる限り僕が行くようにしています。
ーー自分から依頼者のもとに足を運ぶ弁護士は少ない印象です。
事務所の運営効率を考えると、移動時間って無駄なんです。でも、僕はそこにこそ意味があると考えています。法律事務所を訪ねることは、一般の方にとって抵抗があると思いますが、僕が行けば自宅など安心できる場所で話ができます。他にも、服装や話す言葉使いなど、あらゆるところで弁護士への敷居を下げたいと思っています。
ーー今日もニット姿で、カジュアルな服装ですね。
札幌に、高齢者・障害者問題を扱っているベテランの先生がいるのですが、一緒に障害者の施設を訪問した際にスーツを着て行ったら「そんな格好だと警戒感を与えるだけだろ」と指摘されたことがあるんです。そのときから変えました。
もちろん、「弁護士は弁護士らしくあるべき」と考えている先生の発想もよくわかります。法のスペシャリストとして寄り添う、その寄り添い方の違いなのかなと思います。
「困っているなら行ってみるか」という気持ちが根っこにある
ーー高齢者・障害者の支援で大変なことはありますか?
この仕事をしているとよくあることですが、「周囲から見たらどう考えても財産管理ができていなくて、支援が必要と判断されたけど、本人はまだ困っていない」というケースは、対応が難しいことがあります。本人に「あんた誰だ!」「弁護士なんか頼んでないぞ!」と抵抗されてしまうので。
でも僕は、「そうは言っても、あなたはこういう状況ですよ」と、マイナスのスタートから徐々に受け入れてもらうことも仕事だと思っているんです。最初はダメでも、顔だけ覚えておいてもらうと、1ヶ月後にもう一度行ってみたらちょっと態度が変わっていることもあります。
ーー少しずつ信頼関係を築いていくんですね。
高齢者・障害者の事件は、事務所経営という観点では「時間がかかる」と判断されがちですし、仕事に繋がったとしても、弁護士費用はそれほど高くないことが多いです。
でも、そういうところで可能な限り対応したり、トライする姿を、周囲の人たちは見ていてくれるものです。そこから次の事件に繋がるかもしれない、とは考えています。
もちろん、それ以前に「困っているなら行ってみるか」という気持ちが根っこにあるのですが。
相談で困りごとの本質が判明することも
ーー弁護士として今後の展望は?
今やっている高齢者の問題は、「もっとできることがあるんじゃないかな」と考えています。
例えば、成年後見制度では認知症などになった人の財産管理や身上監護をしますが、僕としては、まだ認知症にはなっていないけれど孤立しているような方を、どうやって支援できるか考えていきたいです。
そういう方と関わって、身の回りの小さな相談事を聞くなかで、弁護士が解決すべき法律問題が出てくることも少なくありません。普段から、何でも相談してもらえる関係を作ることのできる仕事ができればと思っています。
ーー最後に、法律トラブルに悩んでいる方に一言メッセージをお願いします。
「こんなことを弁護士に相談していいのかな」と悩まずに、困ったことがあればとにかくご相談ください。もしかしたら、今困っていることではないことがトラブルの本質だと判明するかもしれません。
早く対処するほど、傷を広げずに解消できる可能性が高くなるので、些細なことでも気軽にご相談いただければと思います。