税の問題で困っている人にも、実は弁護士が必要だと知ってほしい
税務署員としての経験が弁護士活動に必ず役立つと勧めてくれた先輩
ーー弁護士になる前に、税務署員として働いていたというのは珍しい経歴ですね。
全国ではほかにもいるかもしれませんが、北海道では私一人だと思います。司法試験に合格してから就職について先輩弁護士に相談したところ「ほかの弁護士ができないことを身につければ、それが大きな魅力になる」と言われて、税務署に勤めることを勧められました。
実際に税務署員を経て弁護士になってみて、弁護士業務のあらゆるところに、と言っても過言ではないくらい、税が関係ある。あのとき先輩は、自分の実感で「税務に詳しいと弁護士業務に役立つ」と実感していたからこそ、私に税務署で働いてみてはと勧めたんだと思います。
ーー具体的にどのような場面で、税務署員経験が役に立つのですか?
税務署時代に法人調査部門にいたこともあって、様々な業種の企業に関する書類を見てきたことが、非常に役立っています。
依頼者である企業さんが資料として出してくれた書類を見ると、その書類に付随して「ほかにこういう書類があるはずだ」というあたりがつけられる。先方は特に関係ないと思って出していない書類でも、こちらから「これこれの書類があると思いますので、それも見せてください」とお願いして見せてもらうと、それが非常に重要な意味を持つこともあります。
向こうから資料を出されるのを待つのではなく、こちらから必要なものを言えるのは、やはり大きいですね。
税務のことも気軽に訊ける顧問弁護士がいれば心強い
ーー法律家の立場だけでなく、税務の立場からも、案件をみられる。
二つの視点を持つというのは、とても大きな強みだと感じています。さらに税務にかかわる案件であれば、問題が起きる前にその発生を防ぐアドバイスもできますし、もし発生したとしても、大きな問題に発展する前に打つべき手がわかるというのもあります。
例えば、税金の申告内容に誤りがあった場合、「税務調査に入ります」と連絡が来ることがあります。たいていの方はその税務調査が入るまで待ってしまうのですが、申告内容に誤りがあるかどうかすぐに調べて、もしあったなら税務調査を待たずに修正申告すべきなのです。
調査前に修正申告すれば、過少申告加算税は5パーセントで済みますが、調査が入った後では10パーセントに跳ね上がります。
こういうことを知らない企業さんも多い。税理士さんが教えてくれればいいのですが、長年のお付き合いのある税理士さんに「あなたがやってくれた税務申告が間違っているんじゃないですか?」と言いづらいという方もいて、「調査で誤りがあったと言われたら、税理士さんにもう一回やってもらおう」と思い先延ばしにして過少申告加算税が倍になってしまう。
税務がわかる顧問弁護士がいたら、気軽にそうした問題にも対応できます。
弁護士が立ち会っていれば防げる「納税者の不利益」
ーー顧問弁護士であれば、気軽に「ちょっと教えて」と意見を求めやすい。
税務署時代、法律家の視点で見ると、納税者の不利益が様々な場面でありました。私が一番問題だと感じていたのは、先程話題にした税務調査です。これは「いついつに行きます」と事前通告してからというのもあれば、当日いきなり来ることもあります(※査察とはまた別のものです)。
どちらにしても税務調査に弁護士が立ち会うことはほぼありませんでしたが、私はすぐに弁護士に依頼する、顧問弁護士がいるならなおのこと、当日であってもすぐに来てもらうことをお勧めします。
というのは、税務署員は法律家ではありませんので、従来からそうだったからその通りしているのだと思いますが、法を意識しない仕事の仕方をしている、という面があるのです。
税務調査で(税務署員が)怪しい(と感じる)取引が見つかった場合、質疑応答記録書というものを作成し、そこに署名押印させるのですが、この際に「ここで認めておけば、まああまり厳しくしないから」といったような言葉が出てくる。これは利益をちらつかせて自白を強要する行為と同じです。
そしてここで署名押印してしまうと、一筆重加といってこれを盾に賦課されることが往々にしてあります。弁護士が立ち会っていれば質疑応答記録書の内容を精査して、依頼者の方が言った以上に感じさせる表現が混じっていないかなどを確認し、必要であれば署名押印の拒否もします。
税理士さんに立ち会ってもらってもいいのですが、税理士さんは国税庁の指導監督のもとにあるため、税務署と同じ傘の下にいるという立場。弁護士は全く別のポジションなので、私は、できれば法律のプロである弁護士の立ち合いをお勧めします。
また、税務調査をきっかけとして従業員の横領行為が発覚することがあります。
その際に、税務署は、横領行為をした従業員に対する管理が甘かったということを理由に、当然のように、従業員を雇用している会社に重加算税を賦課しようとします。重加算税が賦課されれば、会社としては、横領行為によって財産的損害を被りながら、本税+重加算税を納付しなければならないという踏んだり蹴ったりの状態になってしまいます。
しかし、従業員の横領行為に対して当然のように重加算税を賦課することはできないということは知っておいていただきたいです。
実際に、ある裁決事例(国税不服審判所という国税に関する不服申立について審査する機関による判断)では、従業員の横領行為があっても重加算税を賦課できないと判断した事例もあります。
裁決事例や裁判例をみると、従業員の横領行為に重加算税を賦課できるか否かに関しては、様々な事情が考慮される必要があり、横領行為を行った従業員に対する会社の管理が甘かったという理由だけでは重加算税は賦課できません。
弁護士は、過去の裁判例や裁決事例を分析し、今回問題となっている事実における重要なポイントを把握し、防御すべき事項について的確なアドバイスができる能力に長けているのは間違いありません。
税務調査をきっかけとして従業員の横領行為が発覚した場合は、是非、税務調査に精通した弁護士に相談することをお勧めします。
相続や離婚問題とも税金は関係が深い。それも考えたベストな道とは
ーーこうした問題があることすら知らない人がほとんどですね。
税務が前面に出た案件というのは、まだそれほど多くありませんが、相続や離婚といった問題でも、そこに金銭のやり取りが関わっていれば、税の問題が必ず後ろに控えているのです。
夫が亡くなった際に妻がいったん全部相続して、妻が亡くなったら子供が相続する方がいいのか、夫が亡くなった際に妻と子で分けて相続する方がいいのか、発生する相続税の額やどう支払うかも考えて、依頼者にとっていい方法を考えていく。
法律の面からだけでなく税の面からも、依頼者にとってのベストを探っていけるのが、私の強みだと思います。将来的には、こうした法と税の関係性について、もっと多くの方に知っていただく活動もしていきたいです。