迫田 宏治 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
中3、高1のころでしょうか。冤罪に取り組む弁護士の姿をテレビか新聞で知り、弁護士という仕事は、自分の信念にしたがってできる魅力的な仕事だと思ったことが1つです。他方で、会社員、公務員になっても、組織の歯車になって、やりたい仕事ができるわけではないのではないかとも感じていました。
そのような学生時代のイメージを前にしたとき、弁護士の方がより、自分のやりたい仕事ができるのではないかと思い、弁護士を志しました。
イメージと現実とのギャップ
やはり現実の仕事は学生時代に思っていた以上に大変です。個人事業主であり一定の収入を確保しなければなりませんので、やりたい仕事だけやるというわけにはいきません。ただそのような中でも他の仕事に比べれば、自由に仕事がすることができているという側面は多いのかなとも思います。
大変だと感じること
依頼者の方も人間ですので、後からの誤解が生じないように気を付けなければなりません。だから細かな言葉遣いや文書の作成にも細心の注意を払わなければならないこともあります。また、仕事の性質上、事件の相手方から逆恨みされることもありますから、不用意に相手方のプライドを傷つけるような言動をしないように注意しています。
今までの経験と現在の仕事内容
地方の弁護士なので、東京のように、ある分野に特化して仕事をしているわけではありません。交通事故、債権管理・回収、会社の倒産、個人の借金問題、離婚、労働事件、遺産分割、刑事弁護、犯罪被害者支援など、何でもありです。最近取り組んでいる少し特殊な分野としては、自治体の債権管理条例制定、債権管理マニュアル作成というものもあります。
多様な分野の案件を扱って
確かに使う法律は違いますが、法律が違っても、基本的な考え方や条文の解釈の仕方は共通していると思います。だから大変と思うことはありませんし、むしろその方が面白いと感じます。
また特に指針のないような新しい分野に取り組むときは、これといった解釈の仕方が確立していません。だから新しい解釈を自分で考えていかなければならないのですが、そういった部分でまさに弁護士の真の能力が試されると思うし、だからこそそのような分野には魅力を感じます。
弁護士としての信条・ポリシー
最近特に意識していること、頭を悩ませているのは、難解な法的問題について、正確性を失わせることなく、かつ、分かりやすく説明するにはどうしたらいいか、ということです。また、深く練られた論理的に筋道の通った書面作成を、いつも心がけています(弁護士の仕事は、書面作成に最も多くの時間を割きます)。
分かりやすい説明をすることの重要性
確かに、依頼者には法律的な素養がありませんので全て理解してもらうのは難しいですが、例示とかを使いながら、時間をかけて丁寧に説明すれば分かってくださいます。昔は、弁護士が独断的に、「俺に任せろ」的なスタイルで仕事をしていても許されていた時代もあったやに聞きますが、もはやそのような時代ではないでしょう。
あらかじめ争点となりそうな部分や依頼者にとって不利な部分を十分に説明することを心がけています。弁護士の役目は解決のための道筋を示すことであって、最終的な決定をするのは、あくまでも依頼者なのです。
労働事件に特に尽力する理由
働くという事は全ての人の人生においても最も多くの時間を費やす部分の一つだと思います。なので、そこに関する法的問題に携わるとこにはやりがいを感じます。というのもこうした事案は数としては多い反面、解釈にも一定の幅があり、個別事案に応じた解決方法や理論的根拠を考えることが求められ、非常に奥が深いのです。そこにやりがいを感じるのは「イメージと現実とのギャップ」で述べたとおりです。
弁護士を取り巻く状況の変化
まず、弁護士に相談するということに対するイメージは変わりつつあるとは思います。ただ依然として田舎では、特に強い繋がりの残っているコミュニティーの中では、トラブルを持っていて、弁護士に相談したということ自体が一種の恥のように感じる人も多くいます。
ただここには二極化が進んでいるとも思っていて、一方では弁護士が身近になったことによって、些細すぎる問題にもかかわらずすぐに慰謝料を求めて訴訟したいといってくる方も、少数ですがいらっしゃいます。そこを鑑みると「恥」という文化がある意味、メリットとして機能していた部分もあると思うので、この点は多面的な視点からの考察が必要ではないでしょうか。
他方、弁護士数の増加という現状については弁護士界にも危機感があります。これによって弁護士業のビジネス化という流れが強まっています。確かに今まで競争がなさ過ぎた面があるとは思います。
しかしそれでも弁護士という公益性がある職に競争原理を入れてしまうことは望ましいことなのか。このままビジネス化が進めば、公益性を軽んじる弁護士の数も増えてくるでしょう。「儲からない事件はやらない」というのは、資本主義社会において当然に認められた一つのビジネスモデルだとは思いますが、このような主義の弁護士が増えることを果たして社会は受け入れているのだろうか、とは思います。
また、弁護士の就職難が顕在化した結果、弁護士を雇う体力のない弁護士が、無理して弁護士を雇っている側面もありますので、雇う側の弁護士も経済的に苦しいということは、結構あります。「貧すれば鈍する」ではないですが、弁護士事務所における労使トラブルなども、確実に増えてくると思います。
ページを見ている方へのメッセージ
病気になったら、医師の診断を受けるように、何らかの法的問題に直面したら弁護士に相談するという文化は、まだまだ日本には根づいていないようです。相当こじらせてから弁護士に相談しても、打つべき手段が限られてしまうというのは、病気と同じです。
弁護士が、どういう思考回路をたどって相談者にアドバイスをしているのかは、実際に弁護士に接してみないと分からないものです。弁護士とどんどん接し、弁護士の思考回路、弁護士の有用性を理解してくれる人が世の中に増えていくことを期待しています。