冤罪事件報道をきっかけに弁護士を志す〜刑事事件に積極的に取り組み、重大事件や無罪判決を経験
弁護士1年目で獲得した「逆転無罪判決」
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
小学生の頃、死刑確定後に再審で無罪になった「免田事件」の報道を見て、被告人であった免田栄さんの無罪を信じて奔走する弁護士の姿に感銘を受け、自分も将来は弁護士になりたいと思うようになりました。
弁護士になりたくて大学は法学部に進み、2年生の終わりころか司法試験のために予備校へ通い、卒業後は大学院に進んで司法試験の勉強を続けました。
ターニングポイントになったのは、大学院に入って2年目のときに、司法試験に合格した大学の先輩が、司法修習に入るまでの期間を利用して指導に来てくれたことでした。
先輩の指導を受けて、自分の努力が足りなかったことに気づかされ、勉強方法や司法試験への向き合い方が変わりました。振り返ると、本気で合格しようという決意が固まったのはこの時だったのではないかと思います。
ーー注力している分野と、注力している理由についてお聞かせください。
刑事事件分野です。先程述べたように、もともと刑事事件に関わる弁護士の姿を見て弁護士になりたいと思ったので、弁護士になったら注力しようと思っていました。また、弁護士1年目で経験した刑事事件も注力しようと思ったきっかけになっています。
飲食店の雇われ店長が売上金横領の罪で起訴された事件でした。一審では有罪判決が出ている状況、私は控訴審の担当弁護士から「力を貸して欲しい」と求められ、一緒に弁護活動をすることにしました。
一審で有罪の決め手になっていたのは、売上金を夜間金庫に預けるのが店長の役目で、他の人間が売上金に触る機会がなかったという理由でした。そこで私たちは、夜間金庫と店の口座の入出金履歴を調べ、関係者に話を聞くなどの調査を始めました。
調査を進めると、店のマネージャーによるものと思われる、使徒不明な入出金が見つかりました。加えて、このマネージャーは裁判では「借金はない」と証言していたにもかかわらず、実は借金があったことを突き止めました。
これをきっかけに警察が動き、マネージャーの家から売上と一緒になくなっていた伝票が発見されました。結果、高裁で逆転無罪判決を得ることができました。
「依頼者を守るため必要だったと、今でも思っています」
ーー仕事をする上で心がけていることはありますか?
依頼者と話をするときは、言葉の選び方を気をつけています。同じ言葉でも人によって受け取り方は違います。直接的な表現の方が伝わる人もいれれば、柔らかい表現をした方がいい人もいます。依頼者の反応を見ながら、言葉のセレクトや伝え方を変えるようにしています。
また、わからないことは聞くようにしています。弁護士になりたての頃は「自分が一番詳しくなければいけない」と、人に尋ねずに自分だけでなんとかしようと思っていました。しかし、各分野ごとに経験と知識が豊富な弁護士がいるので、自分に足りないものがあるときは、その分野に詳しい弁護士や専門家の助言を聞くようにしています。
ーー弁護士として活動してきた中で印象的だったエピソードを教えてください。
今から10年ほど前、広島の工場で起きた外国人技能実習生による殺傷事件の弁護人を務めました。裁判が開かれるまでに約2年かかったのですが、その間に被告人が「拘禁反応」という精神障害を起こしてしまったんです。おそらく、拘置所で自傷行為をしていたと思います。面会を拒否されることも増えました。
幸い、向精神薬を服用するようになってから被告人の症状は落ち着きました。しかし、裁判員から「仮病」と疑いの目で見られている気がしたのです。そこで私は、面会したときにスマートフォンで動画撮影した被告人の様子を、精神科の先生に見てもらい鑑定をしてもらいました。先生からは精神疾患という鑑定結果を得ることができたものの、拘置所に無断で撮影したということが問題となり、私は拘置所から接見拒否されることになりました。
殺傷事件は無期懲役の判決が確定しましたが、私はこの接見拒否を理由に国に損害賠償の裁判を起こし、現在も争っています。動画を撮影することは、被告人の症状を伝えるために絶対に必要なことだったと、今も思っています。
マイノリティーの人権を守る弁護士になりたい
ーー趣味や休日の過ごし方を教えてください。
落語が好きで、広島で独演会があるときなどは見に行きます。春風亭一之輔さんや柳家喬太郎さん、先日亡くなられた柳家小三治さんが好きです。小三治さんの『大工調べ(だいくしらべ)』という噺がとても面白いんです。
他には、モダニズム建築を見て回るのも好きです。有名なところだと、東京の代々木体育館や旧電通本社ビルですね。東京へ出張したときにはよく落語と建築を見に行ってたのですが、コロナ禍で行けなくなってしまい残念です。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
これまで通り、来た依頼を一つずつ丁寧に取り組んでいくつもりです。刑事事件はできる限りやりたいですね。少数派の人の人権を守ることはとても意味のあることだと思うので、そういう事件に関わる機会を作っていきたいと思っています。
ーー法律トラブルを抱えていて、悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
早すぎるということはないと思うので、悩みがあるなら少しでも早く相談した方がいいと思います。「弁護士に相談するには何が必要なんだろう?」「何か資料を揃えなきゃいけないのかな?」と悩むくらいなら、まずは弁護士に連絡してみてください。