忘年会・新年会シーズンも真っ盛りですが、居酒屋の会計で、注文よりもサービス料やお通し代が高額になった、という報告がネット上であがっています。投稿者は「皆様に知って頂きたい」と注意を呼びかけています。
問題になっているのは、東京・渋谷にある居酒屋です。投稿によりますと、11人で入店して、ハイボールやレモンハイなどお酒を注文したようです。その合計は8630円でしたが、会計の際に3万2946円も請求されたというのです。
投稿に添付されているレシートを見ると、お通し代1人700円、席料1人500円、週末料金1人500円とされていました。しかも、実際の人数より1人多め(つまり、12人)に請求されていました。さらに、席料と週末料金を引いた金額にサービス料15%をかけた金額も加算されていました。お通し自体は質素なものでした。
お通し代やサービス料金などについては、とくに説明はなかったそうですが、メニューの下部に小さい文字で書かれていたそうです。国民生活センターによると、お通し代をめぐるトラブルも起きていますが、はたして、今回のケースは問題ないのでしょうか。上田孝治弁護士に聞きました。
●「合意」の成立していない部分は支払う必要がない
――「ぼったくり」として、減額してもらうことはできますか?
何をいくらで売り買いするかは、契約当事者(店と客)が自由に決めることができますので、飲食の提供に関連して、飲食そのもの以外に、お通し代、席料、サービス料などを支払う内容の合意が成立しているとすれば、その金額が高すぎるというだけでは、減額してもらうことは基本的にできません。
ただし、契約した当事者にとって、まったく想定外の金額になっているというケースでは、そもそも、何をいくらで売り買いするかという点に関する合意自体が成立していなかったことが考えられます。合意自体が成立していないのであれば、当然その部分に関する料金を支払う必要はありません。
――今回のケースは法的問題はないのでしょうか?
まず、お通し代などが1人につきいくらと決められているにもかかわらず、金額を計算する上での人数が1人多いのは、明らかに理由のない過大な請求になりますので、この金額については、当然減額できます。
次に、お通し代、席料、週末料金、サービス料に関しては、これらの金額を含む大まかな内容について、事前に店員から客へ説明があったり、メニューなどにわかりやすく表示されたりしていれば、客がそれを踏まえつつ飲食サービスを受けたことで、これらの料金についても支払う合意が成立していたと考えられます。
この点、通常の居酒屋においては、数百円程度のお通し代が発生することはある程度一般的になっていますので、お通し代については合意の成立が認められやすくなります。しかし、そのほかの名目の料金や、名目を問わず金額が高すぎる設定の場合は、客にとって想定外となり、不意打ち性が大きくなるため、合意の成立が認められにくくなります。
●ひるむことなく支払いを拒絶することが最も有効な方法
――現実的には、どう解決したらいいでしょうか?
まず、事前の説明やメニューなどへの表示がないにもかかわらず、会計時にいきなり料金を請求されたような場合、それらの合意は成立していないと考えられますので、飲食そのものの代金は支払いつつ、それ以外の部分については支払わないことが重要です。
いったん支払ってしまうと、あとで客のほうからお店に対して返金を求めて行動しなければなりませんので、結局、手間や労力を考えて泣き寝入りになりがちです。請求されると断りにくいという人もいると思いますが、合意していない料金を支払わないというのは、ごく当たり前のことですので、ひるむことなく支払いを拒絶することが最も有効な方法です。
もし、すでに支払ってしまった場合は、各地の消費者センターなども活用しながら、粘り強く返金交渉をしましょう。
――そもそもトラブルに遭わないようにするためには?
飲食店では、いろいろな名目で飲食以外の料金を請求される可能性があることを想定しながら、メニューなどの表示に注意を払って、不明な点があれば直接確認するようにしましょう。その結果、納得いかない請求がされる可能性がある場合は、できるだけ早く支払いをしない意思を示す必要があります。場合によっては、退店することも検討しましょう。