ネットオークション「ヤフオク!」で商品を購入し、支払いを終えたのに、相手方と連絡が取れなくなり商品が届かない詐欺被害に遭ったのは、サービス運営者のヤフーが適切な注意義務を怠ったためだとして、神奈川県の男性会社員が2月19日、ヤフーを相手取り東京簡裁に提訴した。慰謝料を含む約70万円の損害賠償を求める。
訴状などによると、男性は2017年9月にヤフオクを使って、13万6千円の時計を購入。「かんたん決済」という決済手段で、クレジットカードで支払った。その後、出品者側から「ご入金ありがとうございます。確認致します。商品の発送は3−4日後になります」などと投稿されたのを最後に、男性からの連絡には一切応答がなくなった。
男性は、ヤフーに対して詐欺被害に遭ったことを報告したが、「いったん完了した支払い手続きのキャンセルおよび、弊社からの返金はできません」と応じてもらえなかったという。
●出品者の登録住所は住民票登録ができない架空のもの
このため、弁護士を通じて出品者の住所等を開示するようヤフーに依頼。2017年11月に開示された結果、出品者が登録していた住所が家電量販店などが所在する住所で、架空の住所である可能性が高いことが判明した。
住所だと記載された埼玉県内の自治体への問い合わせでも、住民基本台帳に記載されていないことが確認された。また、出品者と別名義の銀行口座が代金受取口座とされていることもわかったという。
男性は警察への被害届を提出。さらにヤフーが設ける「トラブルお見舞い制度」に基づき、詐欺被害の補償申請をした。だがヤフーは2018年1月、「取引の相手方の氏名・住所・電話番号を確認せずに取引をした場合など、社会通念上、取引に際して利用者が通常求められる注意を欠いたと認められる取引である」などとして、お見舞い制度の対象外だと告げた。
●原告側「取引リスクを利用者に押し付ける対応に憤り」
男性は、ヤフーが利用料を徴収している以上、利用者に対してサービスを適切な形で提供する義務があると主張する。
また出品者がサービスの利用登録をする際、住民票登録がされていない住所が使われていたことも問題視している。「本人確認が不十分なままアカウントを開設させ、利用を許容していたことはヤフーの注意義務違反にあたる」と指摘している。
原告代理人の勝部泰之弁護士は、同じくヤフーを被告とした名古屋地裁が2008年3月28日判決で、「本件利用契約における信義則上、被告(ヤフー)は原告らを含む利用者に対して、欠陥のないシステムを構築して本件サービス(ヤフオク)を提供すべき義務を負っているというべきである」と判示したことを重要視する。
「インターネットオークション取引において不可避的に生じる取引リスクを全て原告に押し付けるかのようなヤフーの対応に、原告(男性)は強い憤りと落胆を感じている」と勝部弁護士。男性は「今後は、サービスの提供側が責任をもってトラブル防止に努めているサービス以外は利用を控えたい」と言う。