JA全農兵庫は10月下旬、直営レストラン「神戸プレジール」本店(神戸市中央区)で、神戸牛と偽って但馬牛を提供していたと発表した。昨年4月〜今年10月まで、約3200食にのぼる。
神戸牛は、兵庫県内で飼育される黒毛和種の但馬牛のなかでも、さらに厳しい基準をクリアした最高級品が認定される。朝日新聞によると、このレストランの料理長は「神戸牛は希少なので恒常的に不足していたが、客の要望に応えたかった」と不正を認めているという。
このレストランでは、100グラムあたりフィレ肉は、但馬牛5500円で、神戸牛は8000円だった。JA全農兵庫は、来店名簿などをもとに、代金を返金するとしている。こうしたメニューの産地偽装はたびたび報じられているが、法的にはどんな問題があるのだろうか。佐藤光子弁護士に聞いた。
●「食品表示法」や「景品表示法違反」にあたる可能性が高いが・・・
「一般的には、食品偽装は、まず『食品表示法』違反が問われると考えられます。ただし、今回のレストラン等では『店員に直接内容を聞けるから』という理由等で、この法律が一部の表示を除き適用除外とされています。
食品表示法違反となると、行政機関から改善指示が出されます。これに従わないと、さらに改善命令が出されて、場合によっては懲役、罰金になることがあります。
食品偽装の誘引は、産地や品種によって価格やイメージが大きく異なるので、産地や品種を偽って売れば原価を抑えて利益をあげることができることが挙げられます」
ほかの法律で問題はないのだろうか。
「今回のような食品偽装は、景品表示法に違反する可能性が高いといえます。
景品表示法は、実際より著しく優良と消費者を誤認させる行為を『優良誤認表示』として禁止しています。
これに違反した場合、消費者庁から行為の差止めなど、措置命令が下されます。命令に従わないと、事業者の代表者などは2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科されるほか、事業者も3億円以下の罰金が科されます。
さらに、課徴金制度が定められており、課徴金の額は、違反商品の売り上げの3%とされています。
違反行為を自主申告した事業者に対しては、課徴金額が半分に減額されます。納付命令が下されるまでの間に、被害者に対して課徴金相当額以上の自主返金をすれば、課徴金は免除されます。課徴金額に満たない返金でも減額となります。
今回のケースで、JA全農兵庫の対応はどう見るべきか。
「JA全農兵庫は自主申告、自主返金を迅速におこなって、食品表示法や景品表示法の適用によって、さらなるイメージダウンを受けるのを避ける対応をしたのだと思います」