お年玉をもらってホクホク顔の子どもたちに迫る「お母さんが預かっておくよ」の声。素直に応じた子どもたちはその後、預けたお金を返してもらえるのだろうか?
家庭の事情もあって、対応は様々だ。親の立場からは、こんな声があがる。
「自分名義の口座に貯めてもらっていて、大学進学する際にまとめて渡されました。ちゃんと貯めてくれていたんだなと思いましたね。とはいえ、僕自身は子どもがもらったお年玉は自分がもらって、貯めていないですね……」(40代男性・子どもは5歳と0歳)
「母親に全部吸い取られましたね。その分、自分の子どもにはしっかり渡そうと思って、一度も預かったことはありません」(40代女性・子どもは12歳)
確かに金額が多い場合には親が「預かる」のも一案かもしれないが、子どもが成長すれば「返して」と言われることもあるはずだ。法的にはどう考えられるのだろうか。池田誠弁護士に聞いた。
●「未成年者の財産は親が管理するのが原則」
——まず原則として、子どもがもらったお年玉を親が預かることは法的にはどう考えられますか
未成年者の財産は、親(親権者)が管理し、かつ代表するというのが民法の原則です(民法824条)。ですので、お年玉が高額な場合はもちろん、ジュース代くらいの金額であっても、その管理は親権者に委ねられます。
また、子どもが小さければ親権者が管理するのが自然な流れとなるでしょうが、成人間近であってもこの原則は変わりません。ただ、ご家庭によっては、ある程度の年齢になると、お年玉の管理を子どもに任せているご家庭もあると思います。
法律的には、未成年者の財産の管理は前述のとおり親権者が行うのですが、親権者が処分を許した財産については子どもが自ら処分できます(民法5条3項)。この場合の子ども自身の管理は、処分までに発生する事実上の管理ととらえることになると思います。
——子どもが成人したら、親はこれまでの分をすべて返金する必要があるのでしょうか
親権者は、子どもが成人すると、管理権限を失いますので、遅滞なくその管理の結果(収支)を計算し(民法828条本文)、返還しないといけません。
ただ、一方で、子どもの財産を管理したことによる利益まで詳細に計算して引渡さないといけないとすると、親権者の管理があまりに複雑になりすぎてしまいます。そこで、子どもの財産から発生した利益と、子どもの養育や財産の管理に要した費用とは相殺したものとみなすとされています(同但書)。
裏を返せば、親権者は、子どもを代表(代理)して使用したり、その処分を子どもに委ねたりしたお年玉以外は、成人した子供に返還しないといけないことを意味します。なお、もとより、「あなたがもらった分、他の子にあげているんだから」という言い訳も法律的には根拠がなく、返還しなくていい理由にはなりません。