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「統一教会をやめる=地獄に落ちること」救済活動35年の弁護士が語る「脱会」の難しさ
旧統一教会の声明に反論する山口広弁護士(2022年7月19日、弁護士ドットコムニュース撮影)

「統一教会をやめる=地獄に落ちること」救済活動35年の弁護士が語る「脱会」の難しさ

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が7月17日、ホームページで公開した声明文には、全国霊感商法対策弁護士連絡会(以下、連絡会)への批判が含まれていた。35年間、この活動を中心で担当し、現在代表世話人の山口広弁護士が19日、取材に応じ、教会側の主張に改めて反論するとともに、「脱会」の難しさを語った。

●「『被害』じゃないというのは彼らの常套句」

ーー教会側は声明で、「連絡会所属弁護士が中心となってまとめた日弁連の『実態調査集計結果』等は、弁護士や消費生活センターに相談のあった当法人にまつわる案件全てを『被害』と断定しており、その集計内容は不正確であり、水増しされています」と指摘しています。

まず、実態調査集計結果は連絡会で集計したもので、日弁連ではありません。先祖供養のためになどと不安をあおられ、給料の何倍ものお金を仕方なく出してしまった。涙を流して訴えてくる。そのような相談を「被害」として集計しました。少なくとも、困っている人が、今考えても納得できないという被害です。

一度は納得したのに気が変わって返還を求めるのは「被害」じゃないというのは、彼らが必ず使う常套句です。

私たちは本人や家族から「数百万、数千万出してしまった。何とかなりませんか」と相談を受ける。時間がたっていたり、証拠がそろわなかったり、事情によって訴訟にできないものも含まれます。

●「コンプライアンスとは言えない」

ーー教会側は7月11日の会見で、2009年のコンプライアンス宣言以降、トラブルがないと発言したことについて、今回の声明で「それまでのようなトラブルがゼロになったという意味で言ったものではありません」と釈明しつつも、「当法人を相手取った民事訴訟の数は着実に減少してきています」と主張しています。

確かに、時間の経過による証拠の散逸や信者の高齢化等で、訴訟にするのは一時より複雑で難しくなっています。提訴の件数は年10件を超えないこともあります。しかし、彼らの言うことは、コンプライアンスとは程遠い。

コンプライアンスの前提は、これまでの活動を見直して是正することだが、教会側は全く過去のことに開き直って誤解されたなどと繰り返している。

警察からの摘発が相次ぎ30人以上の信者が逮捕、勾留された。2009年には印鑑を売りつけた「新世」という会社による違法な勧誘で、2人の幹部信者に懲役刑判決も出た。その事件摘発の時に発表したのが、いわゆるコンプライアンス宣言です。

「誤解を招くような行為があったので、責任が認められてしまった。今後そういうことがないように気をつけてやりましょう」というもので、コンプライアンスでも何でもない。

●「やめる=地獄に落ちること、脱会は本当に難しい」

ーー教会側は、信者が牧師や改宗業者らによる拉致監禁・脱会強要の人権侵害に遭ってきたと主張し、「12年5ヶ月間監禁された当法人信者が加害者側を提訴した事件で同信者は、東京地裁、高裁、最高裁と全面勝訴し、数千万円もの損害賠償を命ずる判決は連絡会弁護士らの主張を退けました」と説明しています。

確かに2014年に地裁判決が出て、その後最高裁で確定しています。

マインドコントロールされた信者を、家族が家庭に取り戻すのは本当に難しい。よかれと思ってやる家族と、冷静に話し合って、本人も納得して、というプロセスは大変だけど、強制はだめ。入会して活動している本人の気持ちをよく聞いて、対応することが必要です。

信者にとっては、死んだ後の霊界のことが最大の関心事なんです。教えに従って活動し、献金もしてきた。途中でやめるってことは、つまり地獄に落ちるということ。恐怖がある。理屈ではわかっても、やめた後に病気やけがをすると、やめたせいだと考えてしまう。

脱会できたとしても、その後、対人関係を取り戻すまで苦労します。ある看護師さんは人が話しているだけで「私のことをうわさしている」と考えてしまうと言っていました。2世の問題も含めて、大きな課題です。

この問題についての情報や体験談を募集しています。

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プロフィール

山口 廣
山口 廣(やまぐち ひろし)弁護士 東京共同法律事務所
1986年秋に霊感商法の被害者から相談を受けて以来、宗教トラブル、カルト問題、消費者被害対策に取り組んできた。全国霊感商法対策弁護士連絡会事務局長、日弁連消費者問題対策委員長の他、日航機墜落事故(御巣鷹山)と中華航空機墜落事故(名古屋)の被害弁護団代理人などを担当。著書に「検証・統一協会=家庭連合」(緑風出版刊)など。近年は高齢者問題や遺産相続問題にも関心を寄せている。

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