商品を購入した際に、何気なく受け取っているおつりの硬貨。しかし、中には海外の硬貨が混じっているケースもあるようだ。
元「モーニング娘。」でタレントの田中れいなさんは、財布を整理した際に「100ウォン」とみられる硬貨を発見したのだという。1月上旬のブログに「なんこれ??!! 100円玉の様子がおかしくない?!」「おつりもらったとき騙されたか?!」と書き込んでいた。
田中さんのほかにも、屋台で受け取ったおつりの中に、日本の硬貨に似ている韓国のウォンが混じっていたと、ネットに投稿している人がいる。ウォンの通貨価値は、現在の為替相場だと、円の約10分の1だ。500ウォンだと、50円にしかならない。となると、わざとウォンをおつりとして渡しているケースもありそうだ。
このように「海外の硬貨」をおつりとして渡した場合、罪に問われる可能性があるのだろうか。高木良平弁護士に聞いた。
●わざと渡した場合は「詐欺利得罪」
「仮に海外の硬貨を渡したとしても、気付かずに渡している場合には、犯罪は成立しません。差額の支払い債務等の民事上の責任が生じるだけです。
これに対して、意図的に渡している場合は、詐欺利得罪が成立することがあります。刑法246条2項なので『2項詐欺罪』とも呼ばれます」
詐欺利得罪とは、どんな犯罪なのだろうか。
「詐欺利得罪は、次の要件で成立します。
(1)人を欺いて
(2)錯誤に陥れ
(3)この錯誤による瑕疵ある意思に基づいて財産上の利益を移転させ
(4)財産上の利益を取得すること
です」
なんだか難しいが、どう考えればいいのだろうか。
「たとえば、お釣りで、わざと500円硬貨の代わりに500ウォン(約50円相当)硬貨を渡したというケースで考えてみましょう。客が騙されて、500円硬貨と勘違いしたまま帰ったような場合です。
これを、さきほどの要件に当てはめてみましょう。
500円と間違わせるために、500ウォン硬貨を混ぜることが『(1)欺く行為』です。
客が500ウォン硬貨を500円硬貨と勘違いしたことが『(2)錯誤に陥れた』ことになります。
500円硬貨を受け取ったと勘違いしたために、500円と500ウォンの差額を請求することなく客が帰ったのであれば、『(3)錯誤による瑕疵ある意思に基づいて財産上の利益を移転させた』と考えられます。
さらに500円と500ウォンの差額約450円を得したことが、『(4)財産上の利益を取得した』となります。
こうして詐欺利得罪が成立し得るでしょう」
高木弁護士はこのように締めくくった。