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JALが「医師」の座席情報を把握する新制度導入ーー空の上でも「救護義務」あるの?
日本航空のホームページより

JALが「医師」の座席情報を把握する新制度導入ーー空の上でも「救護義務」あるの?

日本航空と日本医師会は2月3日、急病人が発生した場合、事前に登録した医師に応急措置を依頼できる「JAL DOCTOR登録制度」を導入すると発表した。これまでは、機内アナウンスで医師の申し出を呼びかけていたが、事前登録することで、客室乗務員が医師の座席をあらかじめ把握できるため、迅速に応急措置にあたることができる。

同社の発表によると、JALのマイレージ会員で、日本医師会が発行するICカード型資格証を持っている医師が対象。登録はあくまで任意だ。飲酒や体調不良などで対応が困難な場合は、断ることもできる。

急病人に迅速に対応できるという点は評価できそうだが、医師にとって、航空機に乗っているときはプライベートな時間のはずだ。そんなときに、応急措置を担当する義務があるのだろうか。池田伸之弁護士に聞いた。

●義務はないが、倫理的に強く要請される

「医師は、医師法19条1項で『診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。』とされ、診療義務(応召義務)が、課されています。

ただし、応召義務に違反しても、罰則はありません。歯科医師、薬剤師、助産師にも同様の規定があります」

航空機に搭乗中はどうなるのだろうか。

「医療の業務から離れ、航空機内の一乗客にすぎない医師については、『診療に従事する』とはいえず、通常、応召義務はないものと思われます。

ただし、医業を独占し、医療という公共性、公益性の高い職務を担う医師という立場からすると、ドクターコールに応じることは、法律上の義務といえなくても、医療上の倫理から協力が強く要請されるものと思います。

また、今回の事前登録に応じた場合は、急病人などが生じて、乗務員から診療を求められた際に、飲酒などで対応できないときを除き、日本航空との関係で『応急措置』などの診療に応じる必要が生じます。これも任意の協力というのか、さらに一歩進んだ『義務』というのかは、微妙なところでしょう。

もちろん、患者本人に関する医療情報や、医療機器、医療スタッフがないか、あるいは、著しく不足するなかでは、できることには限界があります。診療に応じるとしても、その限度内での義務や責任ということになります」

池田弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

池田 伸之
池田 伸之(いけだ のぶゆき)弁護士 池田総合特許法律事務所
愛知県弁護士会所属。企業法務などの企業案件の他、離婚、相続などの個人案件も多数担当しています。医療分野では、医療過誤事件の他、大学病院等の医療事故調査委員会の委員や厚労省の診療関連死調査のモデル事業の評価委員を務めています。

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