夫の異動で引っ越すことになったが、会社は引っ越し費用の一部しか負担してくれないーー。その妻がネットの掲示板に、「費用の全額を会社が負担すべきではないか」と投稿している。
引っ越しをめぐる費用の総額はおよそ70万円。1年前に東京から北海道への異動が命じられたばかりなのに、もう北海道から神奈川へ引っ越すことになるという。会社は引っ越しの業者代しか負担してくれず、敷金や礼金は自己負担になるという。引っ越し続きで、家計は火の車になっているようだ。
会社が転居を伴う異動で発生する費用を全額負担する義務はないのか。舟木諒弁護士に聞いた。
●会社に転居費用を負担する義務があるわけではない
転居を伴う異動で発生する費用の負担は、会社と労働者の合意に委ねられています。そのため、就業規則等で、「会社が負担する」と明確に定められていない限り、引っ越し費用であっても、必ずしも会社に負担の義務があるわけではありません。
労働者としては、異動の命令(配転命令)がある以上、転居に伴う様々な負担については、もともと予定されたものとして、受け入れる必要があると考えられています。
ただ、配転命令が無効であるとなれば、話は別です。転居費用などで労働者に負担が生じることは、その異動(配転命令)が有効かどうかを考慮する際の一事情にはなるでしょう。
結局、配転命令が有効となってしまえば、異動の費用だけを会社に請求をすることは、法的には難しいでしょう。
●労働者に配慮した工夫が求められる
ただし、会社の業務命令である以上、会社が費用を負担することが望ましいといえます。会社の業務上必要な人材を確保するためにも、一定の費用援助や短期間での転勤が生じないような工夫が求められます。
今回の相談は、引っ越しにかかる業者代については、会社負担とされているようです。会社によっては、規定どおりに支払をしていないところもあるので、就業規則・福利厚生規定など関連規定を確認してみるといいでしょう。