最近、「働き方改革」がよくニュースに取り上げられ、中でも「長時間労働の是正」は改革の目玉として注目されています。その中で「36協定」という言葉をよく耳にするのではないでしょうか。
36協定とは、労働基準法36条が根拠となっており、企業が従業員に残業をさせる際に結ぶ必要があります。会社と従業員の代表者が結ぶもので、労働組合がない会社でも、代表者を選出しています。
あなたの会社にも、仮に労働組合がなかったとして、従業員代表がいるはずなのですが、この代表者はどのように決まるのでしょうか。どのような責任や権限があるのでしょうか。八木大和弁護士に聞きました。
●職場に労働組合がない場合も
「労働組合は、労働者の権利を守るためにあり、会社からの一方的な労働条件の変更を阻止する役割があります。しかし、職場に労働組合がない場合も多く、その場合、会社が一方的に労働条件を変更できるとなると労働者の権利が侵害されてしまいます。
そこで労働組合がない場合、会社は『労働者の過半数を代表する者』との間で協定を結ばなければ、労働基準法に定めるルールを超えて労働条件を不利益に変更できないとされています。この労働者の過半数の代表者の選出方法はさまざまですが、従業員間の取り決めや会社の慣習で決まることが多いようです」
労働条件の変更とは、具体的にはどのようなものか。
「労働者の過半数代表者による協定を結ばないと変更できない労働条件について、一例をご紹介します。
・会社が強制貯金を行う場合(労働基準法18条)・賃金の一部控除(労働基準法24条)・変形労働時間制の導入(労働基準法32条2乃至4)・休憩時間を一斉に与えない場合(労働基準法34条)・残業・時間外労働をすることの協定(労働基準法36条)・割増賃金の代わりに休暇を与える場合(労働基準法37条)・裁量労働制等の導入(労働基準法38条の3)・有給休暇の時間単位の取得(労働基準法39条)・就業規則の作成や変更の意見聴取(労働基準法90条)
過半数代表者は労働者の労働条件変更時に強い影響力をもっています。労働組合がない会社や中小規模の会社では、過半数代表者が知らないうちに決まっていることもあり、いつの間にか誰かがサインし、労働条件が変更されていたということも起こっています。
皆さんの職場では誰が代表者になっているかご存知でしょうか。一度確認してみることをお勧めします」