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スマホ敗戦、ついに「富士通」が携帯電話撤退へ…従業員の雇用、法的にはどうなの?
富士通のスマートフォン「arrows」

スマホ敗戦、ついに「富士通」が携帯電話撤退へ…従業員の雇用、法的にはどうなの?

日本企業のスマホ敗戦、ついに富士通も陥落ーー。富士通が、携帯電話事業を手がける子会社の売却に向けて調整に入ったことが8月22日、日本経済新聞などで報じられ、話題となった。

報道によると、事業会社や投資ファンドからの応札を見込んでおり、売却額は数百億円規模を想定しているという。富士通が撤退となると、携帯電話の端末事業を継続しているのは、ソニー、シャープ、京セラの3社だけになってしまう。

どのような形に落ち着くのかは今後の動向次第だが、市場で「敗北」して、事業売却されてしまう従業員の雇用については、どう守られるのだろうか。解雇されても仕方ないのだろうか。山田長正弁護士に聞いた。

●売却先に移るか、売却元に残るか

従業員はすぐに解雇されてしまうのだろうか。

「売却先企業に移るか、他部署への配転等により売却元企業に残るかになり、直ちに解雇されることはありません。ただし、売却元企業に残った結果、売却元企業全体として人員削減が必要になり、結局リストラ、いわゆる整理解雇をされる可能性はあります」

山田弁護士はそう指摘する。雇用されるかどうかは、どう決まるのだろうか。

「『事業売却』の方法により雇用が維持されるかどうかが変わってきます。ここでは事業譲渡と合併を取り上げます。合併であれば、従業員やその労働契約を含めた権利義務関係がそのまま売却先企業に丸々受け継がれますので、売却先企業での雇用は維持されます」

では事業譲渡した場合は?

「事業譲渡の場合、権利義務関係は特別な手続きなしに移転するわけではありません。個々の財産や債務が、売却元企業と売却先企業で合意した上で移転することとなっています。そのため、企業間で一定の労働者を受け継がないという合意があった場合、その労働者は売却先企業には移籍せず、売却元企業に残ることになります。

ただし、ある一定の労働者だけを譲渡対象外とすることが不当労働行為(労組法7条)や公序良俗違反(民法90条)に該当する場合は、その部分のみ無効となり、労働者を受け継ぐことを認めた過去の裁判例もあります。そのため、注意が必要です」

売却元企業に残った場合は、リストラの対象になってしまうのか。

「売却元企業に残った場合でも、他部署に異動されるなど、ただちに解雇されることはありませんが、人員削減が必要となり整理解雇される場合がありえます。ただし、整理解雇は会社都合でなされ従業員に非がないため、一般的に、容易には認められません。

具体的には、

(1)赤字であるといった人員整理の必要性

(2)経費削減や配転など解雇を回避する努力

(3)被解雇者を選定する場合の合理性や妥当性

(4)労働組合との協議、労働者への説明

といった4要素を総合的に考慮されるため、解雇が有効となりづらいのです。

この点で法的にも、安易な解雇は認められません」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

山田 長正
山田 長正(やまだ ながまさ)弁護士 山田総合法律事務所
山田総合法律事務所 パートナー弁護士 企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。

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