オフィスがまさに灼熱地獄ーー。職場にクーラーがなく困っているという相談が、弁護士ドットコムニュースの法律相談コーナーに複数寄せられています。
飲食店でアルバイトをしているという男性は、厨房に扇風機しかなく室温30度の中で仕事をしているそうです。他にも「母がスーパーの青果部門で働いているが、青果部門だけクーラーが壊れていて、扇風機1台のみ。このままでは間違いなく倒れる」と訴える男性もいます。
職場がクーラーを設置しないことに、法的な問題はないのでしょうか。また職場に冷暖房がなかった場合、会社側に設置を求めることはできるのでしょうか。クーラーのない職場で従業員が倒れた場合には、会社側の責任を問えるのでしょうか。大西敦弁護士に聞きました。
●クーラー設置は義務なの?
まず法令では、何らかの定めはあるのでしょうか。
「『労働安全衛生法』は、労働者を就業させる作業場について、保温に必要な措置、労働者の健康、風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければならないと定めています(23条)。
そして、『労働安全衛生規則』は、事業者は、暑熱の屋内作業場で、有害のおそれがあるものについては、冷房、暖房、通風等適当な温湿度調節の措置を講じなければならないと定めています(606条)
なお、職場が事務所で、かつ、冷暖房設備がある場合、事業者はその気温を17度以上28度以下になるよう努めなければならないとされています(事務所衛生基準規則5条3項)」
もしクーラーがない職場で倒れた場合には、職場に対して、損害賠償を請求できるのでしょうか。
「夏の暑い時期に、扇風機のみしかない環境で仕事を続けた場合、従業員に健康被害が生じる可能性は高く、クーラーを設置しないことは前述した法令に違反することになります。
職場に冷暖房設備がない場合、従業員は会社側に設置を求めることは可能です。自分で申告しづらければ、労働基準監督署に申し出て、職場に対する指導を求めることが考えられます。
仮に、冷房のない職場で従業員が倒れた場合、会社には従業員に対する安全配慮義務違反がありますので、会社に対しては損害賠償請求が可能です。また、従業員が倒れたことは会社の業務に起因するものとなりますので、労災申請を行うこともできます」