職場を少しでも快適にしたい。そんな人の中には、家族やペットの写真を飾ったり、ハンドクリームなどで香りを楽しむ人もいるでしょう。さらに、アロマグッズを扱うショップでは、オフィスで使われることを想定した商品も販売されています。香りによる癒しで、ストレスを和らげる作用を目的にしているようです。
しかし、職場のアロマをめぐっては「迷惑」などストレスを感じている人もいます。ネット上の掲示板などでも「オエっとなった」「香害」などと厳しい意見もならんでいます。
ある人にとっては、仕事を快適に進めるための「アロマ」であっても、ある人にとっては職場環境が悪化したと感じられるようです。職場でのアロマを禁止することはできるのでしょうか。河野祥多弁護士に聞きました。
●「安全配慮義務」にはアロマ対策も含まれる?
「使用者(企業など雇用する側)には、労働者の安全を配慮する義務があります。この義務は労働契約法5条で『使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ、労働することができるよう、必要な配慮』と定められたものです」
安全配慮義務に基づいて、職場でのアロマを制限する必要があるのでしょうか。
「アロマの使用によって他の従業員の健康に悪影響を与える場合には、使用者は安全配慮義務に基づき、従業員のアロマ使用を制限する必要があります。近年、香料を原因として体調不良を起こすことがあることが知られてきましたが、このような従業員がいる場合には、対策は必要でしょう」
●一律に禁止すべき?
「健康に悪影響」とまではいかない場合でも、一律に禁止するべきなのでしょうか。
「禁止まではしなくとも、職場環境を乱さないような使い方を周知する必要はあります。アロマを使用する場合には、人によってアロマに対する感じ方は異なることを十分に理解し、使用量を控えるなどの使い方を心がけるとよいでしょう。
もしアロマを制限する場合には、『アロマによって健康被害が出たり、周囲の作業効率が下がってしまう』などの理由を使用者に説得的に伝え、お互いが納得できるような解決を図る必要があります」
アロマ製品を職場で使う時には、自分自身の「リラックス」効果が、他人にとって「ストレス」になるリスクがあることを意識したほうがよいでしょう。