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2016年04月07日 10時28分

32年間の無免許教師に「給与1億8000万円」返還求めず…妥当な対応なのか?

32年間の無免許教師に「給与1億8000万円」返還求めず…妥当な対応なのか?
写真はイメージ

教員免許を持たない女性が32年も指導していたーー。山形県で今年1月に発覚した「無免許教師」の問題で、山形県教委は、この女性に支払った給与計約1億8000万円の返還は求めないことを決めた。

労働の対価である給与の返還は、法的に請求しにくいと判断したという。ただし、退職手当や共済年金は支払わない。報道によると、保健体育を担当していたこの女性は、教員免許に必要な単位を取得していたが、申請の手続きをしないまま大学を卒業。その後、教員採用試験に合格し、延べ約7700人を教えていた。

女性は2月22日付で、採用時にさかのぼって任用無効とされたものの、女性が所属する高校や県教委は「適切な教育がなされていた」ことを理由に、在校生・卒業生の単位を有効と認め、補講はしなかった。本来なれないはずの職業で得た給与だが、山形県教委が返還を求めないことをどう考えればいいのか。教育問題にくわしい宮島繁成弁護士に聞いた。

●「損害はほとんど発生していない」

「同じような事件はこれまでも報道されています。更新をうっかり怠っていたケースが多いようですが、中には免許状を偽造して提出していたような悪質なケースもあります」

給与の返還を求めないことについて、どういう解釈ができるだろうか。

「返還を求めたケースはあまりないようです。不当利得返還請求(民法703条)の受益と損失の要件を十分充たしていないからだと思います。

たとえば、医師免許を持っていない者が治療して、本来治るべき怪我が治らなかった場合は当然『治療費を返せ』と言えますが、タクシーを利用した後で、第二種免許を持ってないからといって『お金を返せ』と言ってもなかなか認められないでしょう。実際に移動できているからです」

宮島弁護士は、特に生徒が卒業している場合、「なおさら損害は少ない」と言う。

「教員免許がないとわかった場合、学校は卒業単位が不足しないよう補講を行うことが多いようです。ただ、最終的には校長の判断になります。

卒業後の補講というのは見られません。校長が全課程を修了したと認めて卒業を認定し(学校教育法施行規則104条1項、59条)、公法上の効果が発生しているためです。実際に、さかのぼって無効になるなら、その後の大学入学も無効、その後の大学卒業も無効‥‥‥と影響が大きくなりすぎるでしょう。

報道からでは詳細はわかりませんが、卒業生はもちろん在校生の単位も有効と認めているのなら、実損はほとんどないと言えます。この事件発覚後に生じた費用は別ですが…」

では、この「教師」が罪に問われる可能性はないのだろうか。

「教育職員免許法は『相当の免許状を有しないにもかかわらず教育職員になった者』を30万円以下の罰金としています。

ちなみに、ケースは違いますが、免許状を偽造して提出した場合は有印公文書偽造罪、同行使罪になります」


宮島弁護士はこう述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

宮島 繁成弁護士
日弁連子どもの権利委員会。いじめや体罰など学校問題、法教育、スポーツ問題などに取り組んでいる。
所在エリア:
  1. 大阪
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