三井物産が「在宅勤務」制度を4月から導入すると、読売新聞が報じている。報道によれば、自宅で海外の支店や取引先との電話会議などを行うことを認める。対象となるのは、入社4年目以降の国内勤務の正社員約3500人だという。
働きながら介護や育児にあたる人が増える中、在宅勤務制度を取り入れる企業が増加してきている。労働者にとっては、通勤が不要になることによるメリットも大きそうだが、勤怠管理をする企業側の負担は大きそうだ。
制度の導入にあたって、どんな課題があるのだろうか。山田長正弁護士に話をきいた。
●「在宅勤務制度」企業、従業員のメリットは?
「まず、企業側の利点として、1つ目は、交通費を負担する必要がなくなったり、オフィススペースの削減や節電が可能になるなどのコスト削減が挙げられます。2つ目は、災害時等でも事業の継続が可能であることが挙げられます。
労働者側の利点は、通勤時の疲労軽減、育児・介護等の時間確保、家族の非常事態への迅速対応ができる点などがあげられ、主にワークライフバランスの実現に有効です。また、自己管理能力の向上などを通じた生産性や効率性の向上も指摘できるでしょう。
●「在宅勤務制度」により懸念される点は?
「懸念される点としては労働時間の管理が困難になることが挙げられます。その結果、実質的に長時間労働が行われるケース等もあり得るからです」
山田弁護士は、長時間労働を防ぐために、企業には次の6つの対応が必要だと指摘する。
「企業は、次の点に注意しながら対応する必要があります。
(1)PCのログイン・ログアウト状況を確認したり、労働者作成による業務日報などを利用して、労働時間の状況を適切に把握する
(2)残業について許可制を導入する
(3)深夜に仕事をすることについて、強制したり、義務付けない
(4)労働者の当日の業務量を過大なものにしないよう配慮したり、期限の設定に余裕を持たせ、長時間の労働とならないよう調整する
(5)深夜に労働者からメールが送信されていたり、深夜に仕事をしなければ生み出し得ないような成果物が提出されたりした際には、速やかに禁止する
(6)労働者が勤怠評価・成績評価・能力評価などについて懸念を抱くことのない評価制度や賃金制度を構築する
特に(6)を実施することは、在宅勤務制度について企業が警戒する『サボリ対策』にもつながると考えます」