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入社後3週間の退職で研修費「70万円」を会社から請求された――支払う必要はある?
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入社後3週間の退職で研修費「70万円」を会社から請求された――支払う必要はある?

新入社員の娘が精神的に追いつめられて退職を申し出たら、研修費70万円を請求された――。こんな親の悩みが、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。

短大を出て、今年4月にIT関連企業に就職した娘は、入社後、3週間程度の新人研修を受けたという。しかし、残業が多く、精神的に追い詰められたことを理由に、退職を申し出たところ、給与の約4倍にあたる70万円を請求された。しかも、会社が請求したお金を支払うことが記された、会社指定の退職届を使うよう求められているそうだ。

会社は今回の措置について、社内規定に則っていると主張するが、投稿者は、その規定は最近になっていきなり公開されたもので、見たことも告げられたこともなかったと主張している。研修費という形で、会社から請求された場合、支払う必要はあるのだろうか。労働問題に詳しい大川一夫弁護士に聞いた。

●労働者には「退職の自由」がある

「相談者は、研修費を会社に支払う必要はありません」

大川弁護士はキッパリと述べる。なぜだろうか。

「そもそも労働者には『退職の自由』があります。いつでも2週間の猶予を置けば、自由に会社を辞めることができます(民法627条)」

社内規定で別のルールが定められている場合でも同じだろうか。

「そうですね。退職届は、会社指定のものでないといけないわけではありません。『辞めたら損害賠償を請求する』と取り決めるのは、実質的には労働者の退職の自由を制限するもので許されません。

労働基準法も『損害賠償の予定』を禁止しています(16条)」

●「研修費」名目でも請求は許されない

今回のケースでは、支払いの名目は「研修費」となっているが、どう考えればいいのか。

「研修は使用者がその責任で労働者に対して行うものですから、その費用は原則的には、使用者が負うものです。

にもかかわらず、『研修費』名目で労働者に請求するのは、実質的には『損害賠償』にあたるので、許されません。

ましてや、本件では、そういう規定を労働者が知らなかったというのですから、労働条件の明示義務にも反し、この点からも許されません」

大川弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

大川 一夫
大川 一夫(おおかわ かずお)弁護士 大川法律事務所
大阪弁護士会所属、元同会副会長。現在、同会労働問題特別委員会委員、刑事弁護委員会委員。龍谷大非常勤講師、日本労働法学会会員、連合大阪法曹団代表幹事、大阪労働者弁護団幹事など。

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