「イクメン」が当たり前の時代はやってくるのか? 「育児休業給付」を受け取った男性が、2014年4月から2015年1月までに4227人にのぼり、前年同期と比べ31.8%増えたことが、厚生労働省の集計で判明した。
原因として考えられるのが、法改正による育児休業給付の拡大だ。2013年度まで賃金の「半分」を給付していたが、2014年4月からは取得開始後の半年に限り、賃金の「3分の2」が給付されることになった。
ただ、女性は前年同期比5.6%増の22万191人で、男性は女性の50分の1程度にすぎない。政府は、男性の育児休業の取得率を、2013年度の2%から2020年に13%に引き上げることを掲げている。男性の育児休暇取得を促進するためには、何が必要なのだろうか。
男性の育児参加を推進する経営者らでつくる「イクメン企業同盟ひろしま」に所属する山下江弁護士に聞いた。
●スウェーデンは取得率80%
「育児休業給付額が増額されたことは、男性も育休を取りやすくするための一つの方策としては前進だと思います。
しかし、この程度の施策では、男性の育休を増やし、世界に類を見ない深刻な日本の少子高齢化を食い止めるには、まったく不十分でしょう。
少子化は日本経済の根幹を揺るがす問題です。これを食い止めるためには、男女ともに子育てに参加できて、男女の雇用条件が同等となるような社会を実現することが不可欠です」
山下弁護士はこのように述べる。どうすればよいだろうか。
「スウェーデンの例を見てみましょう。
もともとスウェーデンは、日本と同じように、男性の取得率が女性の取得率の10%と低かったのですが、いまでは、男性の育児休業取得率は約80%です」
なぜ、取得率が高くなったのだろうか。
「1999年に、父親専用の育児休暇が法的に定められたことが大きいです。
育児休暇は両親あわせて1年4か月間、認められています。そのうち、父親のみ、母親のみが取得できる期間がそれぞれ60日間定められているのです。
これは『パパクォータ』『ママクォータ』と呼ばれていて、どちらかに偏ることなく、両親がバランスよく取得できるようになりました。また、所得補償は、最初の390日間については賃金の80%が支給されます。
その結果、1998年に1.50まで落ち込んでいた出生率は、2008年以降は1.90を回復しています。ちなみに日本は2005年に1.26、2013年は1.43と低迷を続けてます」
●民間企業の環境整備も必要
改善がみられるといっても、まだ日本は不十分な状況ということか。
「日本には、それこそ『異次元的』改革が求められていると思います。
こうした政府の施策とともに、民間も、男性が育児休暇をとりやすい環境を作ることが必要だと思います。
そのためには、企業のトップが率先して、男性の育児休暇を推進していくべきです」
山下弁護士はこのように述べていた。