ツイッターを買収したイーロン・マスク氏が従業員に対して、「長時間、猛烈に働く」ことに賛同することを求め、応じなかった場合に解雇を示唆するメールを送ったことが話題になっている。
CNBCの報道によると、11月16日に「分かれ道」というタイトルのメールを送り、「ツイッターが成功するには、極端にならなければならない。長時間、猛烈に働くことを意味する」「もし新しいツイッターの一員になりたいなら、添付したリンクでイエスをクリックしてほしい」と求め、「そうしなかった従業員には3カ月の解雇手当が支払われるだろう」と解雇をほのめかしている。
かなり強烈なメールだが、日本でこのようなメールを送った場合、法的な問題はないのだろうか。今井俊裕弁護士に聞いた。
●このメールをもとに解雇通告しても効力は認められない
あくまで、これが日本の企業経営者が日本国内で働く従業員に指示した場合、という前提で考えてみます。まず長時間働け、と言う指示は、仮に命令というほどのものでもなく、経営者からのメッセージに過ぎないとしても、やはり問題発言でしょう。
先進国の中でも労働生産性が低く、長時間労働の性格が強いと言われている我が国において、あえて長時間労働を示唆するようなメッセージは、その企業内的にも、社会的にも受け入れられません。
変革を求めている経営者としてのスタンスを前面に出して企業風土やその会社のカルチャーを刷新しようという真意はわかりますが、このようなパフォーマンス発言を受け入れる下地は我が国にはないでしょう。
さらに、経営者の長時間労働指示に従わなかった場合は3カ月分の手当てを支払って解雇する、なんて発言を日本国内の企業経営者がしようものならば、その経営者は大バッシングを受けます。当然そのような行為を実行に移して実際に解雇通告しても、その効力は認められません。
報道されているイーロン・マスク氏の場合は、買収後の企業経営方針の違いを世間にわかりやすく、そしてメディアに取り上げられるようにしたメッセージのつもりなのかもしれませんね。