「リフレ」と呼ばれる女性と添い寝やハグができる東京・秋葉原の店で、男性客らを相手に売春行為をさせていたとして、売春防止法違反(場所提供・周旋)の罪に問われた共同経営者の男性2人の刑事裁判で、東京地裁(馬場嘉郎裁判官)は8月30日、いずれも懲役2年(執行猶予3年)・罰金30万円の有罪判決を言い渡した(求刑は懲役2年6月・罰金30万円)。
本番行為も含む「裏オプション(裏オプ)」が店で蔓延していることを経営者らは把握していたと認められた。
経営者らは裁判で「店からはすすめていないが黙認していた」「秋葉原ではみんなやっていたし」などと弁解したが、秋葉原の同業者が摘発されると、店舗型から派遣型リフレに業態変更するなど、悪質な「摘発逃れ」も実行していた。
●秋葉原の隅っこでおこなわれていた売春
男性らが経営していたリフレ店は「エース秋葉原」(東京都千代田区)。2020年4月から店舗型として始めたが、2022年4月から風営法の届けを出して「派遣型リフレ」に切り替えた。
エースが営業していた建物。一軒家のような外観で、ここで性的サービスが提供されていたようには見えない
裁判所は、今年4月から5月にかけて、売春目的と知りながら、不特定多数の男性客に店舗の個室を使わせたほか、店外に女性を派遣したという計6件の事実を認定した。
問題視されたのは、性行為を含む「裏オプ」だ。
店の利用客はマッサージなどのコース料金と、添い寝・ハグなどのオプション料金、あるいは本番行為も含む性的サービス「裏オプ」の料金を支払うことになる。
コース料金は完全に店の取り分となるため、女性が稼ぐには「オプション」「裏オプション」をするように持ちかけるしかない。
8月24日の審理では、すでに保釈された経営者らが、起訴事実を認めたうえで、「裏オプ」を店から女性にすすめたり、指示したことはないとして、さまざまな「釈明」を繰り返した。
●「表のサービス」だけで2年間で4500万円の純利益をあげた
秋葉原では今年、警察による「裏オプ」店の摘発が相次ぎ、2022年3月には秋葉原の別のリフレ店が標的となった。
その店が同じ「店舗型」だったため、エース秋葉原の従業員全員で今後の方針について話し合いがもたれたという。
法廷で経営者らはこのように述べた。
「面接では、オプションについて、自分なりにできることだけやればよいと女性に伝えた」
「店内で裏オプ蔓延するのが違法で、店外なら性的サービスも合法だと考えた」
「派遣に切り替えたとき、裏オプしない子ばかり店を辞めて、残った子は裏オプする子だと認識していた。派遣で裏オプは大前提だと思っていた」
被告人質問や供述調書によれば、女性キャストが性病にかかっていたことや、従業員が店に「落ちていた」コンドームを女性に渡したことを認めた。
なお、開業から2年で約4500万円の純利益をあげていることがわかっている。ここに表と裏のオプションは含まれず、その額はどれほどのものになるのだろう。
ただ、女性キャストや客の供述から、コース料金はだいたい7000円〜1万円で、裏オプ(本番)の相場は2万〜4万円と幅があることも判明した。
●派遣型リフレの実態は「デリヘルの一種」
風俗業界にくわしい若林翔弁護士は、秋葉原の「リフレ」について、過去に流行した「JKビジネス」の流れをくむものだと説明する。
新型コロナ禍による貧困などの社会的な情勢も理由に、リフレ店で働く女性は増えているという。
平日夜の秋葉原(写真はイメージ)
「派遣型リフレは新宿、池袋、新橋などでも広がり、本番を厳しく禁止している健全な店もあれば、裏オプありの店もあります。
派遣型リフレは風営法の届けを出して営業しているところが多く、実態はデリヘルです。 本番以外であれば、デリの届けを出していれば裏オプも適法となります。
リフレに限らず、デリヘルなどの性風俗で働く若い女性が増えています。昼職やキャバクラから流れてくるものもあると思います」
事件となったリフレ店のように、店の取り分(コース料金)と女性の取り分(オプション料金)が別れている形態が主流だ。
この点、若林弁護士は「女性がこの形態で稼ぐとなれば、過激な方向にすすんでいくと思います」と指摘した。
●「本番店」と客も認識していたか
SNSやインターネットには、エース秋葉原について「行けば女の子と性交できる」という評判があったとされる。
経営者は「SNSは見たこともあったが、あることないことの情報がたくさんあるので、真に受けていない」と最後までシラを切り通した。
今後は風俗業界と縁を切るという。