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三菱電機の新入社員自殺、パワハラ認め和解成立 遺族「喪失感は一生なくなることはない」
会見を開いた遺族代理人の嶋崎量弁護士(左)ら(2022年8月26日、弁護士ドットコム撮影、東京都)

三菱電機の新入社員自殺、パワハラ認め和解成立 遺族「喪失感は一生なくなることはない」

三菱電機の新入社員だった男性が2019年8月に自殺したのは、配属先の教育主任からのパワハラが原因だったとして、同社が8月23日、遺族に謝罪して解決金を支払うことで、訴訟外で和解が成立した。遺族の代理人弁護士が8月26日、都内で会見を開いて明らかにした。金額は非公表。

遺族側によると、4月23日に漆間啓社長が遺族に直接謝罪。和解合意書では、男性が加害者のパワハラ発言が原因で自殺したことを会社が認め、2021年2月の労災認定を真摯に受け止めること、再発防止策の実施と遺族へ実施状況を5年間文書で報告することなどが盛り込まれた。

遺族は「息子を亡くしてから3年の月日が経ちましたが、この度『苦渋の終結』として、三菱電機と和解をすることにしました。三菱電機側がどんなに謝罪を述べたとしても、再発防止を約束したとしても、息子は二度と生きて帰ってくることはありません。この喪失感は一生なくなることはないでしょう」とコメントを出した。

●「お前が飛び降りるのにちょうどいい窓あるで」

男性は2019年4月、三菱電機に入社。研修後の7月に、兵庫県尼崎市にある生産技術センターへ配属された。

男性は7月上旬、研修内容についての質問に答えられなかったことで、教育主任から「次同じ質問して答えられんかったら殺すからな」と言われたとメモに書き残していた。

このほか、8月には「お前が飛び降りるのにちょうどいい窓あるで、死んどいた方がいいんちゃう?」「(飛び降りたら)ドロドロ●●(男性の名字)ができるな」「自殺しろ」などと言われたことが書かれていた。男性は同年8月23日、公園で自殺しているのが見つかった。

男性が書き残したとされるメモ(2019年12月18日/東京都内/弁護士ドットコムニュース撮影)

教育主任は自殺教唆の疑いで神戸地検に書類送検され、2020年3月に嫌疑不十分で不起訴処分となっている。懲戒処分は、出席停止7日だった。

●過去にも同様のパワハラ行為

誓約書では、教育主任が過去にも同様のパワハラ行為をしたことがあるにもかかわらず男性の教育主任に任命し、加害者や上司に対する監督責任を怠るなど、会社の安全配慮義務違反を認めた。

また、会社側は指導員の懲戒処分の判断についても謝罪した。ただ、再度処分をやり直すことは法的に難しいため、今後の懲戒処分は慎重におこなうといった内容も盛り込まれた。

遺族の代理人を務める嶋崎量弁護士は「パワハラは可視化されることは少ない。加害者とされる人が否定したり目撃者がいなかったりすることを重視して認定すると、多くのパワハラは闇に葬られてしまう。こうしたことを過度に重視して認定することがないように、今後の処分のあり方について遺族として組み入れてもらった」と話した。

三菱電機は8月26日、「風通しのよい企業風土への変革、誰もがいきいきと働ける職場環境の実現に全力で取り組むことで、労務問題の再発防止を徹底するとともに、新しい三菱電機の創生に努めてまいります」などのコメントを出した

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