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勤務先の指示でPCR検査、陰性だったのに「自費負担」ってあり?
(イラスト/よこいしょうこ)

勤務先の指示でPCR検査、陰性だったのに「自費負担」ってあり?

発熱をしたので勤務先の指示でPCR検査を受けたところ、陰性だったのに検査代は自費と言われた——。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者は病院で看護師をしていますが、数日前に37度5分の発熱をしました。上司から「PCR検査を受けて陰性を証明してから出勤する」よう指示があったため、その日のうちに別の病院で2万7500円支払ってPCR検査を受けました。

結果は陰性だったため、熱が下がり次第出勤することになりましたが、検査代は自費と言われてしまったそうです。

女性は「病院の指示でPCR検査を受け、陰性を証明できないと出勤できないのに、自分の病院では受けさせてもらえず高い費用を自費で払うのが納得いきません」と訴えています。

こうしたケースでは、検査代を勤務先に請求できるのでしょうか。大木怜於奈弁護士に聞きました。

●会社が負担すべきと判断される可能性

——使用者が労働者に対し、就業の条件として、PCR検査の受診を義務付けた場合、費用負担はどうなりますか?

今回のケースでは「上司から『PCR検査を受けて陰性を証明してから出勤する』よう指示があった」とされ、使用者から、就業の条件として、業務命令により、PCR検査受診を義務付けられたため、病院で2万7500円支払ってPCR検査を受けたにもかかわらず、自己負担であるとされたということです。

そもそも、素朴な感覚として、「2万7500円もの高額の費用を自己負担させられるなら、PCR検査など受けたくなかった」と考える方や、「会社からの業務命令だからPCR検査を受けたにもかかわらず、自己負担だとされるのはおかしい」と考える方も多いのではないでしょうか。法的には以下のように分析できると思われます。

労働契約における費用負担は、労働契約や就業規則の内容によって決まります。そのため、業務上必要な費用であっても、労働契約の内容として、労働者の負担とするという定めになっていれば、労働者に費用負担させることができます。PCR検査受診受診を内容とする業務命令に関する費用も同様に考えられます。

そして、労働契約の締結に際し、書面などの法令に定める方法によって明示されることが要請されています(労働基準法第15条第1項、同法施行規則第5条第1項第6号)。また、費用負担関係について就業規則に定めをする場合には、費用負担関係に関する事項を記載しなければならないとされています(労働基準法第89条第5号)。

そうすると、相談者の会社の就業規則や労働契約の内容としてPCR検査費用は労働者の負担とすると明記されていない場合などには、会社からの業務命令としてPCR受診を義務付けられたのであれば、会社がこれを負担すべきであると判断される可能性が高いかと存じます。

プロフィール

大木 怜於奈
大木 怜於奈(おおき れおな)弁護士 弁護士法人レオユナイテッド銀座法律事務所
弁護士登録前の会社員としての勤務経験も活かし、ビジネス実態に即したリーガルサポートの提供を心掛け、企業法務においては、「管理法務」を取扱業務の柱として、多様な経営者のパートナーとして、人事労務、営業秘密管理、風評管理など、様々なサービスの拡充に努めております。 また、労働問題にも重点的に取り組み、「企業の人事労務クオリティ向上による従業員に対する真の福利厚生の実現」を目指しています。

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