サラリーマンが恐れることの1つが、突然、クビを命じられることだろう。弁護士ドットコムには、実際に突然の解雇を命じられた人たちから相談が寄せられている。
その一人は「口頭で『仕事態度が悪いから即日解雇』と言われました」という。以前から退職勧奨を受けてきたが、解雇理由証明書を渡すように希望しても、会社は応じなかった。
そのため、解雇理由証明書がないまま解雇に応じるべきなのか。応じない場合には、どうしたらいいのかと質問している。この相談者はどう対応するべきか。島田直行弁護士に聞いた。
●正しくは「解雇について争うかどうか」
ーー口頭で解雇を命じられたこと、解雇理由証明書がないことを理由に、相談者は解雇に応じたくないと考えています。会社側の対応に問題はないのでしょうか
解雇は、会社の都合で一方的に労働契約を解消するものです。ですから「解雇に応じるかどうか」という問題設定が間違っています。正しくは、「解雇について争うかどうか」が労働者サイドの判断基準になります。
ーー解雇の有効性はどう争うことになりますか
解雇が有効であるためには、たんに解雇に該当する事実があるだけでは不十分で、就業規則の定め、あるいは解雇ではない他の選択肢の検討といった手続的なフォローも必要です。
また、実務においては、解雇なのか退職なのかはっきりしないケースも少なくありません。
労働者からは「不当解雇だ」と言われますが、経営者からは「社員が勝手に退職しただけ」と言われることもあります。同じ事実でも当事者によってまったく解釈が違うわけです。
●無理に出社にこだわると「現場が混乱」
ーー相談者は、出社し続けることを考慮に入れているそうです
会社からすれば、即日解雇で労働契約は解消されたことになります。社員が出社すれば、「もう社員ではないから」と拒否することになるでしょう。
社員からすれば、「不当解雇で無効。社員のまま」と言いたいところかと思います。しかし、ここで無理に社員が出社にこだわると現場も混乱してしまいます。相談者は出社を控えるべきでしょう。
実務では、トラブル回避の観点からも、社員が出社を控えて復職を求める通知から交渉をはじめることが多いです。もっともいったん解雇を通知した会社が個別の交渉で復職を認めるケースはあまり経験したことはありません。
ーーこの相談者はどのような対応をすれば良いのでしょうか
このような場合、復職を求めて労働審判という手続を裁判所に申し立てることが多いです。これは労働事件について短期間に解決することを目的とした制度です。
労働審判による解決が期待できなければ訴訟による解決を目指すことになります。その他にはユニオンに加入して団体交渉を求めることもあります。事案の内容や本人の復職への意思などを考慮して方法を選択することになります。
いずれの方法であっても、復職にこだわらず会社が経済的な負担をすることで退職という形で終わることも多いです。