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17歳で相続した父の遺産1500万円、母に使い込まれた! 返還を請求できる?
画像はイメージです(よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA)

17歳で相続した父の遺産1500万円、母に使い込まれた! 返還を請求できる?

父の遺産1500万円を母に使い込まれた! 子育て情報サイト「ママスタ」のBBSに、そんな悩みが投稿されました(実際に寄せられた投稿はこちら→http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=2605915)。

投稿した女性によると、実父が亡くなったのは彼女が17歳のとき。両親はすでに離婚していたため、3000万円の生命保険金は彼女と彼女の兄がそれぞれ1500万円ずつ受け取りました。当時、彼女はまだ未成年だったために、実母にお金の管理を任せたそうです。

5年後、彼女がふとそのことを思い出し母親に聞くと、母親は悪びれることもなく、その1500万円をマンション購入の頭金にしたと明かします。「私が毎月きちんと保険の支払いをしていたから3000万おりたんでしょ?私が何に使おうが、アンタに相談しなくても何の問題もない」と母親に言われ、投稿者は反論できなかったそうです。

ところが、先日、そのマンションで一緒に暮らす兄とケンカに。マンションの契約者である兄から「俺の家」と主張されたうえ、「ここは俺の家だから二度と足を踏み入れるな」とまで言われてしまいました。

そこで投稿者は、彼女の通帳から使われた頭金1500万円を全額返してほしいと主張しています。取り戻すことは可能なのでしょうか? 小澤和彦弁護士の解説をお届けします。

●女性は母親に損害賠償請求ができる

あくまでも、1500万円の所有者はこの女性だったのであり、たまたま、女性が当時未成年であったため、その管理権限が「法定代理人」である母親にあったに過ぎません。

そして、法定代理人は、未成年である子に対して善管注意義務を負います。善管注意義務とは、「善良な管理者としての注意義務」の略で、その事務を任された人の職業や能力、地位などに照らして、一般に期待される水準の注意義務のことをいいます。

今回の場合、預金1500万円の使い道が、たとえば、その女性の医療費や学費であればまだしも、兄名義のマンションの購入資金に使ってしまうなどというのは、明らかに善管注意義務違反です。

したがって、その女性は、母親に対して、善管注意義務違反として損害賠償請求をおこなうことができます。

ただし、法律上は、1500万円の賠償(返還)義務が母親に認められるとしても、実際にはそのような大金を賠償するだけの資力はもう残っていないかもしれません。

他方で、兄のほうは、本来、自分名義のマンションを購入するのであれば、自分自身の財産で購入すべきであったところ、女性の預金1500万円によって、マンションという財産を手に入れています。

つまり、兄は不当に利得を得ているということです。ですから、もし、母親に資力がなければ、女性は兄に対して、不当利得の返還請求をするというのが現実的な請求の方法ということになります。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

小澤 和彦
小澤 和彦(おざわ かずひこ)弁護士 弁護士法人東京多摩法律事務所
第二東京弁護士会多摩支部 両性の平等委員会委員、東京都西東京市男女平等参画推進委員会副委員長。

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