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夫のGoogleマップ、タイムラインに「ラブホ街」記録…不倫の証拠として使える?
写真はイメージ(Ushico / PIXTA)

夫のGoogleマップ、タイムラインに「ラブホ街」記録…不倫の証拠として使える?

GPSの位置情報を活用して、自分が何時にどこの場所にいて、どういう手段で移動したのかを記録してくれるGoogleマップのタイムライン機能。スマートフォンを持ち歩くだけでいいので、とても便利なのだが、一部では、浮気調査に使えるのではないかと言われている。

この機能は、オンになっていないと何も記録されないので、必ずしも全てのスマホに記録されているわけではないが、浮気を疑われているパートナーがラブホテルなどに立ち寄った形跡が残れば、かなりダイレクトな証拠になる可能性がある。

そこまで直接的ではなくても、パートナーが自分に伝えてきたその日の行動と、タイムラインに記録されていた情報が大きく食い違っていれば、嘘を言っている可能性が高いと判断できる。

●ラブホテル街でタイムラインの記録を試してみた結果

弁護士ドットコムニュース編集部のスタッフが、渋谷や池袋などのホテル街にて、Googleマップのロケーション機能をオンにして、どのように記録されるのか試してみた。

まず、渋谷・円山町のラブホテル街を歩いてみた。ホテル街をウロウロしていることはリアルタイムで記録される。ただし、ラブホテルの入口付近に20分ほど立ってみたが、GPS機能はそこまで正確に位置を特定できず、付近の住所が記録されただけだった。

円山町ラブホ街

次に、池袋で試してみた。こちらも、ホテル街を移動していることは記録され続ける。それほど高くないラブホテルにお金を払い、試しに1時間以上滞在してみたところ、「今ここにいますか?」と、滞在しているラブホテルが表示された。画面上の「現在ここにいます」を押すと、ラブホテル名が記録されてしまう。押さなければ、ホテル名までは記録されないが、近くにいたことはしっかりと記録される。

池袋ホテル街

さらに、埼玉県の高速道路沿いにある郊外のラブホテルにも入り、1時間ほど滞在してみたが、やはり、正確な場所はキャッチできず、住所が表示されただけだった。ただ、郊外のラブホテルは周りに何もないため、ここに数時間いたことが記録されると、釈明するのが大変そうだ。

結論を言うと、GPSの精度の問題などで、初めて立ち寄ったラブホテルが自動的に登録されてしまうとは言い難いものの、「ここにいましたか」とホテル名が表示され、うっかり登録してしまう可能性はある。何より、ホテル街に立ち寄って、そこに何時間いたのか、という情報は、削除しない限り、しっかりと記録されてしまう。

●証拠として認められる可能性はある

このような情報は、パートナーが「浮気をしているのではないか」と思い立って、調査をするうえで、重要な情報になる可能性があるが、パートナーのGoogleマップのタイムラインを勝手に調べることに問題はないのか。もし、そこにラブホテル(もしくはホテル街)に数時間立ち寄った形跡があれば、離婚裁判の証拠として使えるのか。澤藤亮介弁護士に聞いた。

「今回のように、GPS機能を利用して取得した位置情報のデータを利用する場合、(1)刑法犯として処罰される行為か、(2)民事上の不法行為として損害賠償責任を負う行為か、(3)民事裁判や家事裁判などで証拠として採用されない証拠となってしまうのか、の3つの異なる視点で考えると分かりやすいと思います。この記事では(3)の点を中心に説明します」

では、証拠として使えるものなのか。

「自分の配偶者とはいえ、その本人に無断でGoogleマップのタイムライン機能などを利用して位置情報を取得する行為は、方法次第では刑事上の不正指令電磁的記録供用罪やストーカー規制法違反に該当し得る行為であるといえます。

その一方で、民事裁判や家事裁判では、何らかの事実を立証するため(本ケースでは夫の浮気の事実)、通常、原告側が証拠を提出することになりますが、証拠の収集過程に強い反社会性が認められる場合、証拠として排除される可能性があります」

ではGoogleマップのタイムラインは使えない可能性があるということか。

「刑事裁判での厳格な違法収集排除とは異なり、民事事件及び家事事件ではその運用は緩やかです。実際の裁判では、収集方法に問題がある証拠が提出されたとしても、相手方から違法収集証拠なので証拠から排除されるべきとの主張が展開されることはあまりありません。また、裁判所も刑事事件と比較するとあまり問題視することなく証拠として採用し、判決における事実認定の基礎としていると言えます。

実際には、民事事件や家事事件でも『収集方法が著しく反社会的』などの理由で証拠排除されたケースも見られますが、今回のような位置情報のデータに限らず、不正アクセスやプライバシー侵害に該当し得るメールやLINEなどのデータも含め、離婚訴訟や不倫慰謝料請求訴訟において、その違法性がさほど精査されることなく証拠として用いられているのが実情です。

Googleマップのタイムラインについては、これ単独で不貞行為を証明するものになるとは限りませんが、証拠の一つとして認められる可能性はあるでしょう。

しかしながら、不用意に証拠として提出した結果、証拠として不採用になってしまうことに止まらず、全く別の手続である刑事事件として、被害届や告訴状が提出されてしまう可能性もありますので、この種の証拠を使用する際は、この点のリスクや可能性も含め、ご依頼やご相談されている弁護士の先生などにご相談された方がより安全でしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

澤藤 亮介
澤藤 亮介(さわふじ りょうすけ)弁護士 向陽法律事務所
東京弁護士会所属。2003年弁護士登録。2010年に新宿(東京)キーウェスト法律事務所を設立後、離婚、男女問題、相続などを中心に取り扱い、2024年2月から現在の法律事務所でパートナー弁護士として勤務。自身がApple製品全般を好きなこともあり、ITをフル活用し業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。

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