共働き家庭での「お財布」をめぐっては、各家庭で様々なルールがありますが、火種となりやすいのも事実。弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、共働きの妻が、自分の給料を過少申告し、浮いた300万円のへそくりをエステ代につぎ込んでいたことが発覚したという男性から、相談が寄せられました。
男性によれば、妻に指摘したところ、「(男性と)ほぼ同額の生活費を入れているので問題ない」「へそくりでやりくりしているのに何が悪いの」と反論されたそうです。ただ、男性としては「そんなお金があるなら(住宅ローンの)繰り上げ償還の費用にあてて欲しかった」と言います。
男性はへそくりも含めて、「共有財産」と考え、自由に使われてしまったことに「使い込まれた」と、強い不満を抱いています。妻が稼いだお金は本来、家計のために使う義務があったのでしょうか。「へそくり」の法的位置づけについて、北島健太郎弁護士に聞きました。
●気持ちはわかるが、婚姻中に稼いだ財産は「共有財産」
妻が作ったへそくりについては、妻の才覚で作ったものであって、妻の固有財産であるという主張は、気持ちとしてはわからなくはありません。とはいえ、もともと婚姻中に稼いだ財産から作られているものですから、あくまでも夫婦の共有財産と考えられます。
共有財産なのですから、それをどのように使うかは、本来、共有者同士の話し合いにゆだねられています。ただ、へそくりとは内緒にしているのが普通なので、その使い道を相談するということはあまり考えられませんね。
本件では、妻が稼いだお金を過少申告して、300万円をエステ代に使ってしまっています。いくら、夫と同じ額を家計に入れているからと言って、残ったお金がすべて妻個人の特有財産になってしまうわけではありません。
そこで、夫が考えるように、エステ代として使われた300万円については、使い込んだと思われても仕方がないといえます。本来は家族のために使うべきお金だったと言えるでしょう。
以上はあくまで法的な観点での回答となります。妻がエステに通うことで、きれいになったり、家庭が明るくなったりするのであれば、家族にも良い影響があるわけで、家族のために使ったと言える余地もありそうです。
しかし、へそくりであっても既述のとおり共有財産ですから、離婚の際には、財産分与の対象になります。もちろん、相手方に分かっている限りにおいてですが。