千葉県内にあった特別養子縁組のあっせん団体(現在は解散)の元代表理事ら2人が3月8日、児童福祉法違反の疑いで千葉県警に逮捕された。
報道によると、元理事長らは、特別養子縁組を希望する夫婦に、営利目的で子どもを紹介した疑いが持たれている。千葉県警は、優先的に赤ちゃんを紹介すると言って受け取った200万円あまりの一部が「利益」にあたると判断したという。あっせん団体の逮捕は全国初。
日本には今、親がいなかったり、親元で暮らせなかったりする子どもが約4万6000人いるが、その8割以上の子どもが乳児院や児童養護施設などで暮らしている。民間の養子あっせん団体にも注目が集まる中、今回はどのような点が問題になったのだろうか。清水伸賢弁護士に聞いた。
●「民間の団体でも、あっせんを行うことは可能」
「児童福祉法第34条1項8号は、成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が、営利を目的として児童の養育を斡旋する行為を禁じており、同法第60条2項は3年以下の懲役、又は100万円以下の罰金(併科されることもあります)の罰則を定めています。
今回は、この団体が受けた金員の一部が利益であるとされ、同法に違反するという疑いがかけられたものです」
お金を受け取ったこと自体が法律に触れるのだろうか。
「そうではありません。養子のあっせん自体は、民間のあっせん団体であっても行うことが可能です。また、営利目的でのあっせんは禁じられていますが、費用を一切受け取ってはならないわけではありません。一定の実費を受け取ることができる旨の厚生労働省の通達が出されています」
実費というのは、出産費用、引取りまでの養育費、交通費などが含まれるが、今回のように「優先順位をあげるため」が実費に含まれないのは明らかだ。
●届け出制から許可制に「特別養子縁組あっせん法」
より安全なあっせんを実現していくための法整備も進んでいる。
「これまで、養子縁組のあっせんを行う事業は届出制が採られ、申請することにより事業をすることが可能でした。しかし、一部の団体等について、営利目的が疑われるなどの不適切な活動が問題となっていました。そこで2016年12月に成立した特別養子縁組あっせん法は、届出制を許可制にして、不適切な団体の活動の抑止を図っています。
また同法は、国や地方公共団体による民間あっせん機関を支援するために必要な財政上の措置や、同業務に従事する者に対する研修その他の措置を講ずることができることも、新たに定めています」