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夫以外の「セカンドパートナー」がいるから結婚生活が安定――そんな主張は許される?
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夫以外の「セカンドパートナー」がいるから結婚生活が安定――そんな主張は許される?

夫や妻という本来のパートナーのほかに、心を許せる相手「セカンドパートナー」をもつことは「不倫とはまた違う新しい男女の形」なのだ――。そんな記事が、ネットメディア「女子SPA!」に掲載された。

記事では、「妊活」をめぐる価値観の違いで、夫がED(勃起不全)になってしまった40歳女性のエピソードを紹介している。女性は、体を重ねることのない日々が続くことで「女としての自信」を失っていった。その状況に耐えられず、かつて交際していた元カレと連絡をとってしまったというのだ。

元カレは、今の夫婦関係のどこに問題があるのかについて、この女性の性格を熟知したうえでアドバイスしてくれるという。女性は、「女友だちに話しても同情されるだけで解決しない内容だからこそ、今は元カレの存在がなくてはならないものになっていますね」と話している。

元カレとは体の関係もあるが、それは夫との性生活が復活するまでと決めているそうだ。この女性は「元カレがいなかったら主人との結婚生活は破たんしていたかも」といい、元カレは本来の結婚生活を維持させる「セカンドパートナー」だと、悪びれる様子はない。

ネットで「セカンドパートナー」を検索すると、「決して男女の体関係は持たず、プラトニックな間柄を保つ」と定義づけているものもあり、実態は多様なようだ。「セカンドパートナー」を法的にはどうとらえればいいのだろうか。富永洋一弁護士に聞いた。

●「セカンドパートナー」相手でも性交渉は違法?

「1979年3月30日の最高裁判決によれば、夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、それが自然の愛情によって生じたかどうかなどの事情にかかわらず違法となり、他方配偶者に対して慰謝料を支払う義務があるとしています。

この1979年判決に基づけば、女性の元カレに対する認識が『セカンドパートナー』という認識にすぎなかったとしても、性的関係を持った以上は、違法です。夫に慰謝料を支払う義務が発生しますし、離婚原因にもなります」

富永弁護士の回答は明快だ。女性がいくら「セカンドパートナー」と言いつくろっても、不貞行為は不貞行為にすぎないようだ。

ところで、この女性の場合、元カレと関係をもつのは夫と性交渉できないから、という言い分があるようだ。それでも、元カレとの性交渉は「違法」になってしまうのだろうか。

「1996年3月26日の最高裁判決によれば、配偶者と第三者が肉体関係を持った場合でも、その配偶者間の婚姻関係がその当時すでに破綻していたときは、原則的に、慰謝料は発生しないと判断しています。

その理由として、不倫が不法行為となるのは、それが『婚姻共同生活の平和の維持』という権利または利益を侵害するからであり、婚姻関係が既に破綻していた場合には、そのような権利または利益は保護に値しないというものです。

したがって、客観的に見ても婚姻関係が既に破たんしていたといえる場合は、慰謝料が発生しない可能性もあります。ただ、この女性の場合のように、夫との性生活が途切れていたとしても、それだけでは婚姻関係が破たんしていたとまでは認められないケースが多いのではないでしょうか」

●「性交渉」がなかったら?

「セカンドパートナー」の定義は様々だが、性交渉を伴わない「デート相手」のケースもあるようだ。こうした性交渉がない「セカンドパートナー」関係を、法律はどうみるのだろうか?

「性的関係がない場合であれば、基本的には交友関係の範囲内として違法性は認められず、慰謝料の支払い義務はなく、離婚原因とはならないのが原則的な考え方といえます。

しかし、ただの交友関係として片づけるには度を超している場合は、注意が必要です。

たとえば、性的関係がないとはいえ、相手宅に外泊したり、何日も二人きりで旅行に行ったりしたケース。セカンドパートナーと一緒にいる時間が多過ぎて夫婦共同生活をないがしろにしたようなケースなどは、『婚姻共同生活の平和の維持』を違法に侵害したとして、慰謝料の支払い義務が認められたり、離婚原因と判断される危険性も十分に考えられます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

富永 洋一
富永 洋一(とみなが よういち)弁護士 ありあけ法律事務所
東京大学法学部卒業。平成15年に弁護士登録。所属事務所は佐賀市にあり、弁護士1名で構成。交通事故、離婚問題、債務整理、相続、労働事件、消費者問題等を取り扱っている。

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