せっかく彼女と楽しいクリスマスを過ごしたのに、早くも年明けに悲劇が訪れた。いつ「破局」が訪れるのか分からないのが、恋愛のおそろしいところかもしれない。
東京都内のIT企業に勤める男性Fさんは学生時代、彼女とラブラブな日々を過ごしていた。クリスマスプレゼントは、いつも以上に奮発して、2万円の時計を彼女に贈った。ところが、その直後から彼女の態度が一変し、年明けに別れることになってしまった。
大きなショックを受けたFさんは「クリスマスプレゼントを返してほしい」と思ったそうだ。はたして、このような場合、別れた恋人からプレゼントを返してもらうことはできるのだろうか。男女をめぐる法律にくわしい小澤和彦弁護士に聞いた。
●無償の「贈与」だった
「法的には、彼女がいったんプレゼントを受け取った時点で、その所有者は彼氏から彼女に移ります。したがって、彼氏が『プレゼントを返してほしい』と言うことは、原則としてできません」
小澤弁護士はこう説明する。どうして、そういえるのだろうか。
「プレゼントを贈るというのは、法律上、『贈与』という契約にあたります。
この贈与とは、当事者の一方が、自分の財産を『無償』で与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずるという契約です。
つまり、彼氏が『(タダで)君にあげるよ』とプレゼントをわたし、彼女が受け取った時点で完結するのです」
●「錯誤」はあったのか
しかし今回のケースでは、クリスマスから年明けという非常に短い期間で、Fさんは天国から地獄に突き落とされている。多少同情の余地があるような気がするのだが・・・。
「たとえば、『ずっと、彼女でいてくれると思ったからプレゼントを贈ったのであって、こんなに早く別れるのであれば、プレゼントを贈るつもりはなかった』というケースがあるかもしれません。
もし、その前提条件に勘違いがなければ、そんな意思表示はしなかったはずだと主張することもできます。
法律用語ですが、こうした場合を『錯誤』があったと言います。贈与も含めて契約は、この錯誤によって無効だとされる場合もあります」
そういった場合であれば、「プレゼントを返してほしい」と言えるのだろうか?
「ただし、この錯誤による無効を主張するためには、その前提条件である『ずっと、彼女でいてくれる』が明示されていることが必要です。
つまり、『ずっと、彼女でいてくれる』や、『少なくとも3年間は彼女でいてくれたら』など、条件を明らかにしたうえで、プレゼントをわたしていれば、返してもらえる可能性はあるでしょう。
しかし、実際問題、そんなことをする人はほとんどいないと思います。結局のところ、プレゼントを返してもらうのは難しいということなります」
小澤弁護士はこのように説明していた。