コロナ禍で相談件数が増加している「DV(ドメスティックバイオレンス)」。DV被害者を守るための法律「DV防止法」の改正に向けて、議論が進んでいる。
内閣府の「女性に対する暴力に関する専門調査会」のワーキンググループ(WG)が10月に取りまとめた報告書では、加害者に被害者への接近禁止などを命じる「保護命令」の対象に「被害者を畏怖させる言動」を加え、「精神に対する重大な危害を受ける恐れが大きい場合」も対象とした。
この報告書を受け、弁護士らが11月24日に参議院議員会館で院内集会を開き、さらなる検討を求めた。
武井由起子弁護士は「保護命令の対象拡大など要望の一部は実現されたと認識しているが、まだまだ課題がたくさんある。弁護士業務をしていてほとんど保護命令を使うことがなく、日本はDV被害者のほとんどを救済できていないことになると思う」と話した。
●直近の暴力でないと保護命令が出ないことも
「No More DV Project」の藤本圭子弁護士は、「重大な危害を」とした保護命令のハードルが高いと指摘する。
「明らかに目でわかる、誰が見てもひどいと感じる直近の暴力でないと、保護命令が出ないことがある。半年や1年前など期間があいたものでも出ない。保護命令の申し立てをしても、裁判所から要件上厳しいため取り下げてもらえませんか、という要請が来ることは、弁護士であれば誰でも経験している」(藤本弁護士)。
取り下げた場合も、離婚の裁判手続きで加害者側から「取り下げたからDVはなかった」などと主張されることが頻繁に起こっているという。
藤本弁護士は「適切な被害者保護ができず、現実の運用では裁判官次第となり、安定性や一貫性をかくことになる」と問題視し、保護命令の対象範囲に経済的暴力を含むことなども求めた。