妻の暴言に耐えられず、離婚したい。ネット上のQ&Aサイトには、そのような相談が多数見られます。
結婚当初から妻に暴言を浴びせられ続け、精神疾患を患ったという男性は、日常的に妻から「バカクズ死ね」と言われ、毎日育児や家事をしているにもかかわらず、「なんで何もしないんだ怠け者」と責められる有様。挙げ句の果てに「お前に人権は無い」とまで言われたといいます。
また、別の男性は、妻に「あなたは居る意味がない」「役立たず」「父親失格」などと何度も言われ、そのたびに胸が苦しくなるそうです。「文句や暴言ばかりの生活が嫌になりました」といいます。
妻の暴言を理由に離婚できるのでしょうか。また、精神的に傷つけられたことに対する慰謝料を請求できるのでしょうか。大熊裕司弁護士の解説をお届けします。
●「モラルハラスメントの証明は非常に難しい」
配偶者の暴言や精神的DVとは、モラルハラスメントとも言われており、モラルハラスメントを理由とした離婚は最近、増加傾向にあります。モラルハラスメントについても、民法770条1項5号に規定される「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と言えれば、離婚理由となります。
しかし、夫婦間で発生するモラルハラスメントは非常に証明しにくいです。通常、十分な証拠を確保するのは困難だと思います。それに加えて、妻から夫に対するモラルハラスメントは、裁判所になかなか信用してもらえないという実態もあります。
それでも、モラルハラスメントが日常的に発生している場合、配偶者と接触している間にボイスレコーダーで音声を録音したり、暴言の内容を具体的に記録することは、証拠確保の有効な手段になるといえます。
ただ、モラルハラスメントをおこなう配偶者は離婚を拒絶する傾向があり、上記のような証拠だけでは婚姻関係の破たんが十分証明しきれない可能性もあります。
モラルハラスメントを理由に離婚請求する場合の慰謝料ですが、証明の困難さもあり、現状では肉体的暴力や不貞行為などよりも低額で、数十万円程度に留まるのが実情だと思われます。
(弁護士ドットコムライフ)