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20年先の「退職金と年金」を財産分与して…妻からの要求を拒否できる?
画像はイメージです(よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA)

20年先の「退職金と年金」を財産分与して…妻からの要求を拒否できる?

離婚に向けた協議をするとき、問題となるのが財産分与です。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに相談を寄せたサラリーマンの男性は、専業主婦の妻から「将来の退職金と年金も財産分与してほしい」と言われ、困惑していると語ります。

「私の定年は20年以上も先ですし、退職金がもらえるかどうかもわかりません。それに、妻は私と結婚していた間は専業主婦で、年金保険料を支払っていたのは私だけです。妻に財産分与する理由はないと思うのですが・・・」

男性は、妻の申し出を拒否できるのでしょうか?遠藤秀幸弁護士の解説をお届けします。

(質問は弁護士ドットコムの法律相談コーナー「みんなの法律相談」に寄せられた相談をもとに編集部が作成しました)

A.「もうすぐ退職予定」「確実にもらえそう」なら分与の対象になりやすい

まず退職金は、給与の後払い的な性質もあるとされ、財産分与の対象となり得ます。しかし、一般的に退職金が実際に支払われるのは退職時であり、そのときの会社の経営状況や退職理由によっては支払われない可能性もあります。将来の退職金が財産分与の対象とされるのは、「退職が目前で、退職金がほぼ確実に支払われる」場合に限られます。

ご相談者は、定年が20年以上も先なので、「定年退職金」が財産分与の対象になることはまずないでしょう。

一方、「離婚時(または別居時)に会社を退職したら支給されるであろう退職金相当額」が、財産分与の対象とされる場合があります。離婚時(または別居時)に会社を辞めたらもらえるお金を仮に計算し、その額から婚姻前の分を差し引いたものを分割する考え方です。

今回の場合は、「将来の退職金」についてはその分与請求を拒否できますが、相手方から「離婚時に会社を退職したら支給されるであろう退職金相当額」を財産分与として請求された場合は、それに応じざるを得ない可能性があります。

次に年金は、2004年から導入された「年金分割制度」が適用されます。「将来の年金を分ける」制度だと思われがちですが、実際は一方の配偶者が「婚姻期間中に支払った保険料の納付実績」を分割し、それをもう一方の配偶者が受け取る制度です。

この制度は、例えば夫のみが会社員として働いて収入を得て、妻は専業主婦として頑張って家事をしていた場合、専業主婦であっても、年金保険料の支払いに妻も貢献したと言えるので、その貢献を年金受領額に反映させることが公平だ、との考え方から導入されました。

分割の対象となるのは会社員・公務員が加入する厚生年金・共済年金のみであり、国民年金は分割の対象とはなりません。また、年金分割を請求できるのは相手配偶者の方が婚姻期間中に厚生年金・共済年金を自分より多く支払っていた場合のみとなります。

ご相談者の方が妻より厚生年金・共済年金を多く支払っていたなら、原則として年金分割請求は、拒否できないと考えた方が良いでしょう。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

遠藤 秀幸
遠藤 秀幸(えんどう ひでゆき)弁護士 遠藤秀幸法律事務所
平成5年弁護士登録、弁護士経験20年で200件以上の離婚事件を手がける。

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